フランスにおける農業者の出産休暇とその背景

タイトル フランスにおける農業者の出産休暇とその背景
担当機関 (独)農業工学研究所
研究期間 2004~2005
研究担当者 片山千栄
藤本保恵
工藤清光
発行年度 2005
要約 フランスでは、社会保障制度としての農業者の出産休暇(代替要員の派遣と費用の給付)が利用されており、その背景には、世代で独立した暮らしや働き方、休暇取得に対する意識などの特徴がみられる。
キーワード
フランス、社会保障制度、農業者の出産休暇、代替要員の派遣、費用の給付
背景・ねらい 少子高齢化が急速に進む農業・農村に若い担い手を受け入れる条件として、出産や育児に関わる支援環境の整備は重要であり、母子の健康面を考えれば、妊娠から出産前後の一定期間に安心して休業できる環境づくりは、どの職業においても必要である。日本では、被雇用者には法律に基づく産前産後休暇があるが、農業を含む自営業者には適用されない。一方、欧州には、農業者にも出産休暇が保障される国があり、出生率の回復など家族政策が充実するフランスでは「出産する女性農業者の代替要員手当」制度が知られている。そこで、日本の農業者の支援環境整備を検討する基礎資料とするために、制度の枠組みおよび実際の農業者の利用実態、その背景を探るため、現地調査を実施した。
成果の内容・特徴
  1. フランス北西部のモルビアン県にて、制度の関連機関(派遣組織、保険運営組織等)、事例農家(5組の産休取得女性と配偶者)への訪問聞き取り調査を実施した(2004年)。
  2. 農業者の出産休暇は、女性農業者が休む間、その仕事の代替要員が派遣され、費用が社会保険給付として全額支給されるしくみで、社会保障制度の一環である(表1、図1)。モルビアン県では、利用条件を満たす人の9割近くの利用実績がある(2003年)。
  3. 対象農家はいずれも核家族で暮らす畜産経営であった(表2)。出産休暇制度の利用の際は、それぞれ既定の最大期間まで休んだと答え、家族に対する精神的な負担を感じずに、心身ともに休め、家族と共に過ごせることを評価していた。
  4. また、農業面でも子育て面でも親世代の手助けを期待していないこと、出産時に限らずバカンスを取るなど休暇取得への意識が高いこと、女性の法的地位が明確で社会保険の負担と受益に関して意識されていること、などがうかがわれ、これらが、フランスで出産休暇制度が受容され、利用されている背景と考えられた。
成果の活用面・留意点 農業者が出産休暇を取得可能な国の存在と、代替要員派遣とその費用の社会的な負担というしくみは、日本における支援施策を検討する上で、参考になる。ただし、各国の社会的背景等を十分踏まえる必要がある。また、出産休暇に限らず、農業者の休暇に対する意識を高めることで、直接的な受益者以外の理解が得やすくなる可能性が考えられる。
図表1 228077-1.gif
図表2 228077-2.gif
図表3 228077-3.gif
図表4 228077-4.gif
カテゴリ 経営管理

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