基礎地盤詳細調査のための透過電磁波探査の波形解析技術

タイトル 基礎地盤詳細調査のための透過電磁波探査の波形解析技術
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2004~2006
研究担当者 奥山武彦
金喜俊(韓国国立釜慶大学)
黒田清一郎
有吉充
発行年度 2006
要約  基礎地盤における体積含水率の空間分布の把握や、亀裂・パイピングの発生検知等を目的とする透過電磁波探査において、地盤中の電磁波伝播過程を電磁界解析によって厳密に再現した逆解析手法を用いることによって、高い空間分解能で地盤物性値分布の可視化を行う技術である。
キーワード 基礎地盤・地盤物性・透過電磁波・地中レーダ・トモグラフィ
背景・ねらい  透過電磁波を用いた地盤調査(電磁波トモグラフィ)は、その水分や導電率変化に対する高い感受性、定量的評価が可能であることや、高い分解能を活かして、農業用構造物の基礎地盤の詳細な調査技術としての活用が期待される。しかし従来のイメージングのための逆解析手法(トモグラフィ解析)は、初動の読み取りと波線解析によっている。初動の読み取りの完全自動化は難しく労力も必要である。また波線解析については、実際は有限の波長を有する電磁波を波長無限小と仮定する物理的に矛盾した解析に基づいている。この矛盾に起因する分解能の限界が指摘されている。
 そこで地盤での電磁波伝播現象の数値計算を行い、計測波形を再現することによって、地盤の物性(比誘電率、導電率)の空間分布のイメージングを行う手法の開発を行った。
 これにより地盤における体積含水率の空間分布の把握や、亀裂やパイピング等の発生の検知等を、労力のかかる初動読み取り等を行うことなく、従来よりも高い空間分解能で行うことが可能になる。
成果の内容・特徴
  1. 地盤の電磁気特性に関する既往の研究に基づいて、透過電磁波の計測結果から比誘電率の分布を推定する場合のCRIMモデルの妥当性の検証を行った。同モデルによって非粘性土の場合に体積含水率変化の推定が可能であることを明らかにした(図1)。
  2. 音響波動方程式とMaxwellの電磁波波動方程式の類似性に着目し、高周波音響領域弾性波探査におけるTarantora(1980)の全波形逆解析手法(full wave form inversion)に関する理論的研究を参考に、透過電磁波探査における全波形逆解析手法のアルゴリズムを提案した(式1)。
  3. Maxwell 方程式の時間領域差分(FDTD)法に基づいて、電磁波が地盤中を伝播する過程のシミュレータを作成し、シミュレート結果と計測波形を比較しながら全波形逆解析による地盤の比誘電率・導電率分布のイメージングを行う解析コードを開発した。
  4. 均一な地盤に小さな空洞(図2の左上の白い四角)や水で満たされた空洞(同図右下の黒い四角)を想定したモデルに対して、上記方法を適用しその妥当性を検証した。
成果の活用面・留意点
  1. 弾性波探査の分野では、従来法(波線解析やフレネルボリュームトモグラフィ)より全波形逆解析手法の方が、より高い分解能(超分解能)を有すると期待されていた。近年は実データへの適用や現場実証試験が行われ、その有用性が検証されてきている。同様に、透過電磁波探査でも超分解能のイメージングを可能にする道を拓いた。今後は現場での実証試験による検証が必要である。
  2. 比誘電率分布の推定と同様の方法で、導電率分布の推定も可能である。
図表1 228129-1.gif
図表2 228129-2.gif
図表3 228129-3.jpg
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