2004年インド洋津波によるタイ南部沿岸農地の被害実態と除塩対策

タイトル 2004年インド洋津波によるタイ南部沿岸農地の被害実態と除塩対策
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2005~2006
研究担当者 桐博英
丹治肇
中矢哲郎
発行年度 2006
要約  津波により海水を被り塩害を受けた農地は、乾期においては表層2-3cmのみ高濃度塩分が維持されるため表層の除去が除塩に効果的である。雨期においては概ね1000mm以上の降雨により除塩される。
キーワード 津波、塩害、長期被害調査、土壌電気伝導度、沿岸農地
背景・ねらい  津波により被災した農地では、長期的に続く塩害の実態把握と除塩対策が必要である。しかしながら津波被害による農地被害のデータはほとんど取得されていない状況である。よってインド洋津波により死者行方不明者8,000人以上の甚大な被害を出したタイ南部地域沿岸において、6回にわたる約2年間の長期塩害実態調査を実施した.調査対象地域は図1に示すプーケット県の畑作地(Pa Lai)、パンガー県の混合果樹園(Bang Niang,Lam Kaen)、ゴム園(Nam Khem)、ココヤシ園(Leam Pakarang)である。塩害の調査には,1:5水浸出法により塩分濃度の一つの指標である土壌電気伝度(以下EC(1:5)と記す)を測定した。また土壌塩分のリーチングの実態を把握するために,タイ南部果樹園とほぼ同じ土性である低透水係数で粘土質土壌の農村工学研究所圃場(栗林)において除塩試験を実施した。
成果の内容・特徴
  1. 被災後の乾期においては津波浸水による表層の土壌塩分濃度は作物の一般的な生長限界である水飽和抽出溶液のEC値4dS/mを大きく超えており、被災したほとんどの農地で塩害は進行していた。被災農地の作物は、マンゴスティン、ランブータン、ココヤシ、ゴムの木などの樹木作物が主であった。図2左にEC(1:5)の鉛直方向の分布の経時変化を示す。EC(1:5)は表層1~2cmで高く以下急激に減少している。よって、降雨の影響のない乾期においては散水によるリーチングより、3cm程度の表層土の除去が除塩に効果的である。
  2. 塩害を生じていた混合果樹園においては津波浸水に伴う塩分は総降雨量1,397mmの降雨を記録した2005年7月によりほとんど除去されていた(図2左)。被災1年後の乾期においても表層への塩分の再集積はないことを確認した。この傾向は調査を行った他の地点でも同じであった。
  3. 2.の結果を詳細に調べるため、図3のようにアクリルの排水溝で囲った90cm×90cmの枠内にテンシオメーター、自動土壌溶液採取器を深さ10cm、30cm、50cm、70cmに設置し、津波浸水を想定して塩化ナトリウム50g/Lを散水総量12.5L浸透させた。その後じょうろで降雨強度100mm/hで散水を行い、表面流出水の塩分濃度が十分低くなった40分後、湛水浸透により塩分除去を行った。図2右のEC(1:5)の鉛直分布を見ると300mmの浸透ではまだ作土層内に塩分が残留しているが1000mm以上の浸透によりほぼ塩分が除去されている。図4に示す浸透量毎の水飽和抽出溶液のECの変化からもおよそ1000mm~1300mm以上の浸透により塩分が4dS/m以下に除去されていることがわかる。よって雨期においては概ね1000mm以上の降雨により土壌塩分は除去される。
成果の活用面・留意点  圃場実験は透水係数の低い粘土質土壌においてなされたものであり、透水係数の高い砂質土壌の場合については別途実験が必要である。
図表1 228146-1.gif
図表2 228146-2.gif
図表3 228146-3.jpg
図表4 228146-4.gif
カテゴリ マンゴスティン

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