タイトル |
他世帯の意向を踏まえた農村地域資源の維持・管理活動への参加予測 |
担当機関 |
地域計画研究室 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
遠藤和子
合崎英男
小川茂男
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発行年度 |
2008 |
要約 |
他世帯の意向を踏まえて農村地域資源の維持・管理活動への参加意向を判断してもらう質問紙調査とマルチエージェント・シミュレータを組み合わせた手法であり、住民の相互作用を考慮した地域全体の参加意向世帯数を予測することができる。
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キーワード |
農村地域資源、参加意向、予測、マルチエージェント・シミュレータ
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背景・ねらい |
農村地域資源の維持・管理にあたって、地域住民の参加が重視されている。しかし、この活動に対しては「他の世帯が多く参加するなら、我が家くらい参加しなくても大丈夫だろう(あるいはその逆)」といったように、他世帯の参加動向によって自己の参加意向を変化させる可能性がある。この場合、各世帯の参加意向を積み上げるだけでは、地域全体の参加世帯数を精度良く予測することはできない。そこで、他世帯の参加意向を踏まえて農村地域資源の維持・管理活動への参加意向を判断してもらう質問とマルチエージェント・シミュレータを組み合わせて、地域全体の参加意向世帯数を予測する手法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 地域全体の参加意向世帯数の予測手順は、1)地域に居住する世帯を対象とした質問紙調査の実施、2)回答結果の統計分析、3)分析結果のマルチエージェント・シミュレータへの実装、4)シミュレーションの実施、の4段階から構成される(図1)。
- 質問紙調査では、農村地域資源の維持・管理活動に参加する意向を持つ地域内の他世帯の割合(他世帯参加率)をランダムに変化させ、他世帯参加率と当該世帯の参加意向との関係を把握する(図2)。この質問では、他世帯参加率を含めた活動条件を考慮して、参加することから得られる効用(参加効用)が参加しないことから得られる効用(不参加効用)よりも大きければ「参加する」が選択されると想定している。
- 回答結果を離散選択モデルで分析する。世帯ごとに説明変数の係数が異なりうるモデルを利用することで、他世帯参加率が当該世帯の参加意向に与える影響を詳細に分析できる(図3)。他世帯参加率の係数が0より大きい世帯(青色)ほど、他世帯参加率の上昇に応じて参加意向が一層強くなる(同じ他世帯参加率のとき、係数:1の世帯と比較して、係数:3の世帯の方が参加意向確率が大きい)。他方、同係数が0より小さい世帯(赤色)ほど、他世帯参加率の上昇に応じて不参加の意向が一層強くなる。
- 図4はマルチエージェント・シミュレータを利用した予測結果を示す。縦軸が参加世帯率、横軸が各世帯の参加意向を判断する閾値を示す。通常、閾値を0.5として予測するが、これはある世帯の参加効用が不参加効用より少しでも大きければ、当該世帯を「参加する」に分類することを意味する。この場合、効用のわずかな変動により参加意向予測が逆転することもあり得る(図4は、このような世帯が多数を占めるときの一例)。他方、閾値が1に近いほど変動に対して頑健になるが、参加世帯率の予測値は相対的に低くなる。
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成果の活用面・留意点 |
- 世帯を意思決定単位とした農村地域の動向予測や地域計画支援手法の開発において、世帯間の相互作用を含めることが可能となる。
- 考慮する地域の範囲や協力依頼する作業内容などの質問で示す条件は、地域の実情等に応じて設定しなければならない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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