タイトル |
農業集落の変容と共同作業――農業集落調査のデータを用いて―― |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1992~1992 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1992 |
要約 |
日本の農業集落は,その内部においてもまた外部との関連においても,ますます多く非農業的要素と接触するようになっている。が,共同作業の維持率等からも窺えるように,このことは農業集落の機能喪失に直結しない。
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背景・ねらい |
日本の農村社会の変容過程を分析することを目指した研究蓄積は,決して数少ないわけ ではない。が,それらの大半は事例的な接近方法を採るものであり,地域的なヴァリエー ションを視野に収めた変容過程の研究がもう一方で必要とされている。 本研究は,農林業センサスの中で実施されてきた農業集落調査(臨時農業基本調査におけ る抽出調査も含める。1955年~1990年)のデータを用いて,農村社会,さし当りは,調査 が捉えた農業集落の変容過程に接近しようとするものである。
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成果の内容・特徴 |
- (1)立地条件と耕地,(2)世帯構成,(3)生産組織と生産基盤の整備,(4)集落運
営の4つの側面から農業集落の変容過程を捉え返してみると,(1)農業集落は都市への近 接性を増し,東山,東海などの地域を中心として耕地転用を多く経験してきた,(2)農業 集落の戸数規模は主として非農家世帯の増加によって大幅に増大し,同時に農家率は大幅 に減少してきた。この傾向は南関東と近畿の2地域において顕著である (図1),(3)農事実行組合や農業団体への参加農家 を有する農業集落は減少傾向,生産組織への参加農家を有する農業集落は増加傾向にある。 基盤整備事業は東日本において先行的に導入されてきた,(4)農業集落の寄り合いは開催 回数こそ若干の減少傾向にあるが,農道・農業用用排水路の維持・管理については変わらず 議題となっている,といった特徴が示されている。
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また農業集落は,立地条件や世帯構成が上述のように変化してきたにもかかわらず,農業 生産と深く結び付いた地域の共有資源の管理を行っている。(1)農道及び(2)農業用用排 水路についてそれぞれ検討した結果,(1)1955年から90年までの35年間に農道を管理す る農業集落の割合は減少したが,1990年時点でなお農業集落の6割以上が農道管理を行って 行っており,この割合は北陸と近畿の2地域で特に高い,(2)農業用排水路については1970 年代以降6割台の農業集落が管理を行っており,1980年から90年までの10年間に北海道と南 関東を除く全ての農業地域でこの割合が増加している,ことが示された (表1)。
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成果の活用面・留意点 |
農業集落は内外においてますます多く非農業的要素と接触するようになってきているが, このことがそのまま農業集落の機能喪失を帰結しているわけではない。農業集落の変容過程を 捉えようとする際には,農業集落の存立が(それ自体変化する)多様な諸条件によって支えら れていることが十分認識されるべきである。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
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