タイトル |
市町村農政担当者が見る農業の将来展望に関するアンケート調査結果 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1992~1992 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1992 |
要約 |
市町村農政担当者へのアンケート調査により,10年後に予想される農業構造の変化と将来の担い手の展望,およびその上での市町村の農業施策の方向性について,農業地域別,農業地域類型別に解明し,21世紀における日本農業構造を展望した。
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背景・ねらい |
日本農業を支える昭和1ケタ世代が今後10年以降に農業からリタイアするとともに,世代 交替にともなう農業構造の変化が予想されている。そうした10年後の時期での農業構造の 変化と将来の担い手を展望し,市町村農業施策をどうするかから21世紀の日本農業構造の 展望解明のために,市町村アンケート調査を実施し分析した。
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成果の内容・特徴 |
全国の3,238市町村(特別区を除く)の農政主管課長を対象に,平成3年7月にアンケート調 査を実施し,2,892市町村から回答があった(回答率89.3%)。多岐にわたる調査項目のう ち,主なものの分析結果は次の点である。
- 昭和1ケタ世代のリタイアによる農業の世代交替(表1)
。「後継者が農業を引き継ぎ,農業を維持している」市町村は全国では7%にすぎない (北海道30%)。「農業を継がない後継者が多く,農作業を他にまかせたり,農地を貸付・ 売却している」が東北,北関東,北陸等の平場・水田地域で高く,農地・農作業の受け手が 一定程度存在すれば農地流動化による構造変化が進行すると見られる。後継者に農業が引き 継がれずに「依然として高齢者が農業を維持している」は東山,中国,四国など中山間地域 で高く,農地の受け手がいなくて高齢者が営農を継続せざるをえず,高齢者問題が深刻化す る。
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土地利用型農業の10年後の姿(表2)。平坦部では, 「大規模農家・生産組織が中心になって担う」が北海道,北陸,東北で高く,主要稲作地域 では大規模農家・生産組織を担い手とした農業展開が見込まれ,「兼業農家等の個別農家の 対応で農業が維持されている」は南関東,近畿と東山,四国,中国で5割程度で,都市近郊地 域と中山間地域とで兼業農家等での農業維持の傾向が強いと予測される。「担い手がいなく なり,農地の荒廃,農業の縮小が進む」も都市的地域で15%,山間農業地域で11%あり, 両地域では兼業農家による農業維持さえ困難となり,農地荒廃・農業縮小問題が予測される 。山間部ではこの農地荒廃・農業縮小が過半であり,全般的農業後退が予測される。
- 5ha以上の稲作大規模経営の最大規模(表3)。個別大
規模経営では10年後に20ha以上の経営が約1割の市町村に成立すると予測され,北海道, 東北,北陸,北関東の東日本でさらに経営規模が拡大し,西日本ではその動きは鈍い。法人 経営・完全協業経営は,現在は17%の市町村にしかないが,北陸46%,北海道29%に比較 的存在している。10年後には現在のほぼ倍の34%の市町村であるとみていて,特に北陸 68%,東北55%が高い。
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成果の活用面・留意点 |
本研究は市町村農政担当者を対象にした調査結果の分析であり,彼らの目を通した市町村の 農業の姿と農業の担い手との変化を展望し,さらにどのような施策が必要であるかを把握す ることができる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
経営管理
水田
大規模経営
中山間地域
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