タイトル |
わが国食品産業の海外直接投資──グローバル・エコノミーへの対応── |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1991~1992 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1992 |
要約 |
わが国食品産業の海外直接投資は,アメリカ,アジア,EC,オセアニアなどで増加することになったが,その背景には円高経済への移行,果汁及び牛肉などの輸入自由化,EC市場の統合など内外環境の急激な変化があった。
|
背景・ねらい |
近年,目覚ましく増加しつつあるわが国食品産業の海外直接投資の背景,特徴,問題点など を,その主要市場であるアメリカ,アジア,ECなどの地域別の分析を通じて明らかにし,わ が国食品産業が直面している数多くの問題の一端を提示することにある。
|
成果の内容・特徴 |
- 1980年代半ば以降,食品産業の海外直接投資はアメリカ,アジア,EC,オセアニアなどで大
幅に増加することになった(表1)。
-
アメリカは,円高に加えて,国際漁業環境の変化,果汁・牛肉の輸入自由化を背景に急増し た。したがってその中心は水産食料品製造業,飲料製造業,肉製品製造業などであったが, これら以外にも様々な業種の企業がこぞって進出した。アメリカはたんに原料の供給市場と してではなく製品の販売市場としても魅力的な存在だからである (表2)。
- アジアも重要な投資市場である。なかでもタイは食材の供給市場として欠かせない存在であ
る。農水産物が豊富で,価格も割安なうえに,労働力も豊富で賃金コストも低いからである 。また政治的に落ち着きをみせ始めた中国とともに,大衆消費時代を迎えつつある香港,シ ンガポールなどへの進出も目立って増加している。
- 残されたEC,オセアニアはマイナーな存在であった。しかし前者は1992年末の市場統合を背
景に,後者も牛肉の輸入自由化を背景に急増している。ただ前者がフランスを中心にその目 的が現地企業との提携によるわが国でのライセンス生産などであるのに対して,後者は原料 の供給市場として位置付けられており,その意味するところは異なっている。
- 1990年代に入って食品産業の海外直接投資も転機を迎えているが,長期的には一層の増加が
避けられず,国内農業及び食品産業との棲み分けが重要な課題となろう (表3)。
|
成果の活用面・留意点 |
海外直接投資の増加に伴って,投資摩擦が増加しており,撤退を余儀なくされるケースも少 なくない。特に,中小企業が多く,しかも現地企業との合弁が主体のアジアへの直接投資に は目立っている。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
カテゴリ |
コスト
|