タイトル |
投資の収益性とその規定要因の解明 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1993~1993 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1993 |
要約 |
総合施設資金融資を受けた農家の投資の名目収益率は農業の交易条件が悪化したことによって低い水準にとどまっているが、実質収益率は必ずしも低くない。また投資による規模拡大率は、自立経営の維持といった観点から適切な水準にあった。
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背景・ねらい |
自立経営を育成する一つの方法は、経営の規模拡大である。1968年 に創設された農林漁業金融公庫の総合施設資金は、自立経営農家を 育成するための金融的な措置である。ここでは公庫融資を受けた農 家を対象として、投資の内部収益率を計算し、それがどういった要 因に規定されているかを明らかにした。
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成果の内容・特徴 |
- 投資のリターンである利潤変化の要因を価格変化が支配する項目と
、実物的な技術の変化が支配する項目とに分け、特に前者、つまり 価格変化が支配する項目について、要因分解を行った。農業の交易 条件は分析の対象となった期間で、投資の実質収益の増加を打ち消 す方向に強く作用している。
- 1979年以降に総合施設資金を借り入れた農家の中で、投資の名目収
益率が5%を上回った経営は、稲作、酪農、肉用牛でそれぞれ41%、 45%、59%である。つまり、資金の償還を問題なく行うことができ た農家は、標本の半分に過ぎない。また投資の実質収益率は、稲作 で低いけれども、酪農、肉用牛については必ずしも低くない。
- 投資の名目収益率と実質収益率が、貸出金利を狭んで反対に分布し
ている事実は、投資の私的誘因と社会的な必要性が乖離しているこ とを意味する。 (表1) - 所得デフレータと自立経営の下限所得変化率の比較をとおして、農
家が自立経営にとどまるために必要となる規模拡大率が計算できる 。必要規模拡大率は交易条件が悪化した経営類型ほど大きい。また 、実際の規模拡大率は、自立経営を維持するといった観点から適切 な水準にあることがわかった。 (図1)
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成果の活用面・留意点 |
投資収益が2時点の利潤の差額として計算されている。したがって、 交易条件の変動が投資の名目収益率の値を大きく変える可能性があ る。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
規模拡大
経営管理
肉牛
乳牛
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