タイトル |
農家の投資行動 ―動学的投資関数による接近― |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1992~1993 |
研究担当者 |
伊藤順一
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発行年度 |
1993 |
要約 |
最大値定理を用いて動学的な投資関数を計測し、1960年代後半以降に観察される農機具投資の変動を説明した。投資の変動に関係しているファクターは、資本の使用者費用と実質利子率であった。
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キーワード |
最大値定理、動学的な投資関数、使用者費用、実質利子率
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背景・ねらい |
機械化によって実現した労働節約的な技術変化は、戦後わが国農業における大きな特徴の一つである。そして通説に従えば、こうした機会化の進展は、生産要素の相対価格の変化がもたらす技術変化のバイアスと要素代替によって説明される。ところが、趨勢的に変化してきた相対的価格は、資本ストックの水準を調整している投資の循環的な変動を説明できない。また、農機具投資はインフレーションが加速した時期に増加し、それが停止した時期に減少している。投資支出のメカニズムを明らかにすることが、本研究の目的である。
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成果の内容・特徴 |
- 投資関数の実証分析では、分布ラグが多用されてきた。しかし、このモデルにはラグ構造が内生的に決まらないという理論上の欠点がある。本分析では、費用の割引現在価値の最小化といった農家の行動仮説から、動学的な投資関数を導き、時間によって定義される最適な投資のパスを求めた。
- 1970年代半ばをピークとする農機具投資の変動は、二つの要因によって説明されることがわかった。一つは、実質利子率の変化に対応した調整速度の変化であり、もう一つは、資本ストックの最適値と現実値の乖離である。そして、この二つの変数を規定している根本的な要素は、資本のキャピタル・ゲインである(表1)。
- 農機具ストックの最適値と現実値の乖離は、特に1970年代半ばに大きくなっている。そして近年についても、必ずしも過剰投資を結論できない(図1、2)。
- 特に労働需要に関して、ル・シャトリエの原理が見事に成立していた。
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成果の活用面・留意点 |
農機具の投資額とストック額は独自の推計によって得られたものであり、上の3の結論が、データに大きく依存している。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
機械化
ストック
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