タイトル |
農家家族研究の動向と今日的課題 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1993~1993 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1993 |
要約 |
日本の農家家族は、農家としての再生産の危機と称されるほどに大きな、また多局面における変化を経験している。この事態に接近するために、成員の意識や行動に十分に着目して、より緻密な実証的研究が要請されている。
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背景・ねらい |
日本の農家家族について、いくつかの原型的な特徴─系譜と超世代 的な連続性の重視、居住規則における直系制など─が、指摘されて きた。同時に、今日までに農家としての特質をとどめながらも多く の面で、農家の農家としての再生産のあり様が問われざるを得なく なるような、諸々の変化が生じていることも周知の事柄である。主 として既住の文献資料に基づき、日本の農家の家族変動について、 研究動向を整理し、今日的な論点を抽出する事を目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- 農家に限らず、日本の家について概ね次のような点が特徴として指
摘されてきた。すなはち、系譜と超世代的な連続性が重視される。 家は成員の生活共同体であり、また家業経営体である。家長個人や 家長の位座に権威の源泉はないが、家は成員を覆う何らかの力を持 つ。居住規則に着目すれば直系制家族である。 (図1) - このようないわば原型的な特徴をもつものとして捉えられてきた日
本の農家家族が、今日までに農家としての再生産の危機と称される ほどに大きなまた多局面における変化を経験している。この事態に 直面して、制度的な面に傾斜しすぎた従来の接近方法への反省も含 めて、いくつかの議論がなされている。行動論的な接近方法を加え る必要性の提起、家族変動を単なる変形ではなく変質─家族に関わ る規範が変化すること─に及んだ折にもたらされるとする捉えの提 起などが有効と考えられる。
- 暫定的に4つの柱を立てて農家家族の今日的な様態を要約すること
ができる。第1に、就業構造に関して、農外就業の増加が著しい。 兼業化は地域に形成され展開してきた農外労働市場の特質に規定さ れながら世代や性によって異なる形で農家成員の間で進行した。第 2に、家族関係について、複数世代同居が支配的な中で世代間の緊 張等についての指摘が多くなされている。同居のメリットをより多 く享受しているのは年長世代であり、年少の世代は矛盾を感じたり ディストレスを経験しがちである。第3に、限られた領域の中で世 代や個人を単位とした生活の分離化傾向が見受けられる。第4に、 家の継承をめぐって、今日までに誰が、何を、どのように継承する のか継承の仕方が問われるようになっている。
- 農家の家族変動に関して、いくつかの仮説が提起されているが、農
家が農業経営の基盤として、また成員の生活の場として何らかの意 味を持ち、また家族として集団性と歴史を有するものである限り、 農家家族としての特質を完全に喪失することはない。
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成果の活用面・留意点 |
農家の家族変動について、実態面を中心とした動向が整理されたが これらはむしろ、より緻密な実証的研究のための課題の提起でもあ る。
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図表1 |
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カテゴリ |
経営管理
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