タイトル |
タンザニア・キリマンジャロ農業開発計画下における農家経済の動向(Ⅱ) |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1989~1992 |
研究担当者 |
香月敏孝
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発行年度 |
1993 |
要約 |
わが国の援助で進められているキリマンジャロ農業開発計画は、安定的な高収益稲作を達成し、周辺地区の経済活動を著しく活性化させているが、今後援助にかかわって整備された種々の資本ストックの維持に問題が残されている。
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キーワード |
キリマンジャロ農業開発計画、高収益稲作、経済活動を著しく活性化、資本ストックの維持
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背景・ねらい |
開発途上国に対する農業開発援助は、アジア近隣諸国に始まり、近年はアフリカ等それまで援助の対象とならなかった諸国にまで拡大している。経験の浅いこれらの地域で援助を行う場合、受益農民の経済動向や意識をつぶさに開発関係者が知ることは困難が多い。こうした問題領域が調査研究の対象として提起されている。タンザニアで行われている稲作灌漑事業を事例にこうした問題への接近を行った。
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成果の内容・特徴 |
開発初期および終了期の2度にわたる現地調査によって、以下の点が明らかとなった。- 当地で行われた援助計画によって、受益農民の稲作経営はほぼ定着し、従来のトウモロコシ作を中心とした畑作と家畜飼養とが結びついた経営形態と比較すれば、稲作は極めて安定的で高収益な営農を実現することとなった。稲作はかなりの雇用労働に依存するものの、極めて利潤部分の大きい営農形態となっている(表1)。したがって、この計画に対する受益農民の評価はかなり良好であるとともに、地域の経済活動も活発化するところとなっている。また、農家世帯員の就業形態も変化が生じ、それまで不安定であった兼業就業部門から農業部門への回帰がみられる(表2)。
- しかし、当地で行われている経営の生前分割相続慣行によって、しだいに経営規模は縮小される過程にあり、米が農家の自給食糧としても定着してきたこともあいまって、今後小規模飯米生産農家を多く形成することが展望される。
- こうした状況の中でプロジェクト維持のための諸コストの引き上げに対して農民は概して反対する立場をとっており、灌漑施設、トラクター等農業機械の資本ストックの維持、保全の問題が残されている。州政府指導・普及機関および水利組合等現地組織による自主的なプロジェクト管理運営機関の今後の対応が注目される。
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成果の活用面・留意点 |
プロジェクトの成果については、上記のような流動的な状況の中にあり長期的に考察される必要があるとともに、他のプロジェクトとの比較検討が残された課題である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
経営管理
コスト
ストック
とうもろこし
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