タイトル |
中国の農業・農村の再組織化と双層経営体制 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1994~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
双層経営体制政策は、農業生産リンク請負制の導入に際しては導入支援の理論として使われたが、導入完了後は農業・農村を現政権が意図する一定の枠内で発展させるための理論として使われている。
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背景・ねらい |
中国では、農業・農村問題の改革開放政策の適用に当たっては、その初期に「集団」の束縛からの「個」の解放という点に力点が置かれ過ぎたため、農業経営や農村運営に当然必要な「組織」までも弱体化または崩壊させてしまうという事態が生じている。本研究の目的は、農業・農村の再組織化を図るための重要な政策として実施されている双層経営体制政策について、その概括的内容、形成・展開過程、政策意図等を明らかにすることである。
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成果の内容・特徴 |
- 双層経営体制とは、集団の統一的指導を重視する立場の者が農家生産量リンク請負制(以下「請負制」という)を経営主体の観点から捉え直したものに過ぎない(図1)。
- 双層経営体制概念は、請負制の導入時点には既に形成されており、この時点では請負制の導入のための手段として使われていたが、双層経営体制政策として具体的に提起された1986年以降の時点では農業・農村の再組織化を図るための手段へ転身している。
- 双層経営体制政策は、その後さらに「アメ」と「ムチ」との二面性を持つ政策に転身している。「ムチ」としての政策的意図は、双層経営体制という枠組みの中で、請負制の契約を通じて農業・農村を現政権の政策的規制下に置くとともに、農民の間に広まっている「個別経営化」意識を制止して農地の公有制を維持させることである。「アメ」としての政策的意図は、双層経営体制を通じて農民に実利を与えることによって中国共産党への政権付託獲得の手段とするとともに、農業・農村の市場経済化推進機構としての役割及び大規模経営育成の実施機関としての機能を発揮させることである。
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成果の活用面・留意点 |
これまで明らかになっていなかった双層経営体制の内容、政策的意図が明らかにされたことにより、今後の中国の農業・農村の再組織化の方向を理解する際の材料に活用できる。
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図表1 |
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カテゴリ |
経営管理
大規模経営
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