タイトル |
米国の農業政策の特徴と最近の方向性 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1995~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
UR合意・厳しい財政制約下で,近年の米国農業政策が,市場指向型農政の展開と,その一方で環境政策・地域政策等の拡充という方向性をもつことを明らかにした。
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背景・ねらい |
本研究では,米国の農業政策の特徴を整理するとともに,近年の目標価格・ローンレート等の引き下げ基調,不足払い対象面積の削減等の市場指向型農政の展開と,その一方での環境政策・地域政策等の拡充という方向性を探り,1995年農業法を展望する。
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成果の内容・特徴 |
- 米国農業における政府の役割は非常に大きい(表1)にもかかわらず,米国がガット交渉において最もドラスチックな農業保護の撤廃を提案してきたのは,大きな財政赤字を抱える中で,EUとの「攻撃的保護」(輸出補助金)によるドロ沼の戦いに終止符を打ちたかったからであるが,その背景には,米国には,補助金なしで競争すれば,穀物貿易においてEUには負けないという勝算があった。
結果的には,UR合意は当初の米国案よりもはるかに緩やかなものとなったため,米国はUR合意の実施により穀物貿易を中心とする利益を得る一方,ウェーバー品目の関税化による損失は軽微で済むと見込まれている。
- 財政赤字の重圧の下で,市場指向型農政の展開は不可避のものとなっているが,価格支持等の削減の一方で,環境対策,地域政策の拡充への要請が強まっている。これは,ガット合意の国内支持削減に関しての「黄」の政策から「緑」の政策への転換の方向にも合致するものでもある。
- 95年6月に可決された「予算決議」には,7年間で134億ドルという大規模な農業予算削減が盛り込まれたため,1995年農業法における各プログラムの見直しは現行プログラムの廃止等かなり抜本的なものとなる可能性も含めて当初の予想よりも相当厳しくならざるを得ないものと考えられている。予算制約が米国の農業政策を規定する状況がしばらく続くものと思われる。
- 米国では,市場指向型農政=保護削減が,効率性を至上目的とする大規模農業のみを生き残らせ,単作化・機械化・化学化等を助長し,環境に被害を与えてきたことへの反省として,環境政策の拡充,持続型農業の推進等が求められてきたという流れがあり,保護削減は環境にマイナスであるという見方があることは興味深い。
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成果の活用面・留意点 |
1995年農業法の農業プログラムの多くを含んだ財政調整法案の策定では,共和党主導の議会とホワイトハウスの間での対立が解けず,今後の推移をよく見守る必要がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
環境対策
機械化
輸出
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