タイトル |
米国におけるbST使用の酪農経営・生乳需給への影響 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1995~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
販売が開始されてから1年半を経過した時点(1995年7月)での米国におけるbSTの酪農経営・生乳需給への影響を調査し,消費者の反対は鎮静化したこと,小規模酪農家と大規模酪農家の間で評価がかなり分かれる状況等を明らかにした。
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背景・ねらい |
本研究は,販売が開始されてから1年半を経過した時点での,米国におけるbST(1頭あたり乳量を増加させる牛成長ホルモン。1日当たり約5kg増加)の普及状況,酪農経営における効果,実際の消費者の反応,小売店・製造業者の対応,全体の生乳需給・価格への影響等について評価し,我が国の今後のbST問題への対応を検討するための材料を提供することを目的としている。
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成果の内容・特徴 |
- bSTの需要面への影響については,全米各地(ニューヨーク州他6州)で今回試みた消費者57人へのインタビューでも,bSTの認知率35%,bSTを知っている20人のうち反bSTの反応をした者は6人というように,全体的にはbSTがもはや消費者サイドにとっては大きな問題ではないというのが共通した認識となっている。生乳価格も堅調に推移している。
- 一方,供給側については,見方が大きく分かれている。bST認可を推進してきた農務省,コーネル大学等のAnimal Scientist,モンサント社等は,ア)牛の能力に関係なくbSTによる乳量増加の絶対量は同じ,イ)bSTは「規模中立」な技術なので規模の大小を問わず酪農家の収益を増加させる,ウ)bST使用に特別な飼養管理技術は要らない,エ)bSTにより牛の病気が増加することはない,等を強調する。
- しかし,バーモント州とニューヨーク州の10戸の酪農家へのインタビューでは,小規模酪農において,bST使用で牛がやせ,病気が多発し,収益増にならなかった経営があったほか,bSTのマネジメントに不安を持ちbST使用に踏み切れずにいたりで,ネガティブな対応や結果がほとんどであった。一方,大規模経営では,bST使用でかえって牛の健康がよくなる傾向さえみられ,大きな収益増を実現しているものもあった(表1)。このように,大規模と小規模の間に,bST使用に対する評価や実際の使用効果にかなり大きなギャップが生じている可能性が窺われる。また,酪農家の見解では,高能力牛の方がbST使用による乳量増加の絶対量が大きい傾向がみられる。
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成果の活用面・留意点 |
小規模酪農がbST使用に成功していない傾向がみられたことは,日本の酪農家がbSTを使用することのメリットに関して吟味を要する点であろう。しかし,飼養管理技術の点からみると,日本の40頭経営は米国の200頭経営に匹敵するものとみなすべきで,高投入・高産出型の日本の経営にはbSTは適した技術だという指摘もある(モンサント社)。
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図表1 |
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カテゴリ |
経営管理
飼育技術
大規模経営
乳牛
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