タイトル |
農山村環境保全のためのオプション価格の推計 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1995~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
環境保全に対して積極的立場と消極的立場の人がいるため,中山間地保全のためのオプション価格を,正の支払意志額はもちろん負の支払意志額(補償受容額)をも同時に推計できるコンティンジェント評価法を開発して推計した。
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背景・ねらい |
農林業の持つ公益的機能評価などの実証的研究においては,環境保全に対する評価額は暗黙のうちに非負であると仮定されてきた。しかしながら,現実には環境保全に対して積極的な人々がいる一方,開発を望む人々も存在している。したがって,環境保全の価値評価にあたっては,前者の人々に関しては保全のための支払意志額(WTP)を,後者の人々に関しては開発をあきらめることへの補償受容額(WAC)を推計する必要がある。この両者を同時に推計できる手法が開発されれば,両者の調整を目指す環境評価の議論は,より一般的になると考えられる。そこで,本研究では、環境保全のための支払意志額の一つであるオプション価格(OP)について,WACを負のWTPとして評価する二肢選択コンティンジェント評価法(DC-CVM)を開発して,推計する。
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成果の内容・特徴 |
- OPを計測した多くの研究は,OPが正であることを前提としてたが,この前提の下では,保全に積極的でない人々の意見が反映されないため,集計的OPは過大評価の可能性がある。そこで,本研究では,負のOPについても,支出関数によるDC-CVMを用い,指数線形型モデルで計測する手法を開発した。この手法は,正のWTPを前提とした対数線形型モデルに比較して,対数変換による極端に大きな推計値の影響も受けにくくなっている点で優れたモデルであることも,実証分析から示した。
- この手法により,ア)子供が山村留学に参加した世帯と,イ)子供が自然活動に参加した世帯について,これらの活動が行われている長野県八坂村の自然環境保全のためのOPを計測した結果,山村留学世帯は平均49,355円,自然体験世帯は平均23,900円となった。なお,負のOPは推計されなかったものの,山村留学世帯では,付け値方程式が説明変数の数値いかんで負のOPをとりうるという結果を得た。
- 山村留学世帯では,山村留学の時期が最近であるほど,また両親が農村部出身者であるときOPが高く,自然体験世帯では山村留学の事前情報をより多く持ち,留学の可能性が高いとき,OPが高くなることが推計された。他方,所得要因と属性要因を比較した結果,後者の方が全体としてOPにより大きな影響を与えることが明らかになった。
(表1) (表2)
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成果の活用面・留意点 |
農林業の公益的機能の経済的評価のための一つの有効な方法としてCVMへの期待が高まっているが,本成果はその有効性を検証するとともに,それをより広く適用していくための新たな手法を開発する一つの試みである。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
中山間地域
評価法
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