タイトル |
低投入型農業のための農家補償額の推計 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1995~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
低投入型農業の支援を目的として,コンティンジェント評価法を用い,肥料・農薬散布量の50%削減に対して農家が求める補償額の推計を行い,あわせて補償額の大小に影響を与える要因について明らかにした。
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背景・ねらい |
農業は各種の公益的機能を持つ反面,集約的農業生産は水質汚濁等の環境負荷をもたらすおそれがあるため,肥料・農薬等の投入量をいかに減ずるかという問題が重要な農業環境政策上の課題となっている。その課題への一つのアプローチとして,低投入型農法を採用する農家に対して補償することが考えられる。本研究では,北海道美瑛町を事例として,補償水準を推計するとともに,その水準の決定要因を明らかにすることを目的としている。
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成果の内容・特徴 |
- 北海道美瑛町の専業農業地帯において(表1),戦略的バイアスに強いと言われている二肢選択コンティンジェント評価法(DC-CVM)を用い,施肥量・農薬散布量を営農指導書の50%削減することに対して,農家が求める補償受容額(WAC)の推計を試みた。その結果,多くの被験者は低補償額を認めたくないとき,低補償額での回答自体を拒否するために,低補償額に対する受諾率がかえって高くなり,平均推計WACの低下というバイアスが生じることが明らかなった。
- 農家が求める平均WACは,ア)畑作では年10a当たり1万円から2.5万円,イ)水田作では1.9万円から2.5万円前後という推計額を得た(表2)。本調査では肥料・農薬50%削減の場合の減収についても設問してあり,畑作では平均42.9%減収,水田作では50.6%減収という回答を得ている。そこで,畑作調査農家の平均反当収益49,623円に畑作減収率を乗ずれば21,288円となり,水田作では北海道5ha以上層の平均反当収益60,703円に水田作減収率を乗ずれば30,715円となるが,これらの金額はDC-CVMによる平均推計WACに近い金額であり,DC-CVM推計の妥当性を傍証するものである。
- 畑作・水田作とも,ア)面積が大きいほどWACは大きく,イ)有機・低投入型農業への関心が高いほどWACは小さくなっている。他方,景観保全への態度,経営の拡大予定や後継者の有無がWACに与える影響については,畑作と水田作では異なる傾向が得られたが,このことはWACが単に収益性だけではなく,個別農家の経営展開の方向と併せて,決定されることを示すものであろう(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
環境保全型農業を推進するための施策の検討に際して,本成果で用いたコンティンジェント評価法の活用が期待される。なお,同評価法はこうした農家補償額の推計にとどまらず,より広く農林業の公益的機能の経済的評価等に適用可能であるが,その場合被験者に理解され易い仮想市場をどう設定するか,バイアスをどう小さくしていくかが課題となる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
肥料
病害虫
経営管理
水田
施肥
農薬
評価法
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