稲作生産関数の計測―メキシコ・モレロス州の事例―

タイトル 稲作生産関数の計測―メキシコ・モレロス州の事例―
担当機関 農業総合研究所
研究期間 1995~1995
研究担当者
発行年度 1995
要約 メキシコ・モレロス州の稲作の生産関数を計測して,その生産技術には機械化が進展していないにもかかわらず,規模の経済が存在すること,その理由は見張り労働(鳥追いや圃場管理)の分割不可能性によることを明らかにした。
背景・ねらい 農業生産技術の規模の経済については多くの研究があるが,先進国では規模に関して収穫逓増,発展途上国では一定であることが一般に認められている。その理由としては,先進国の農業技術は機械の使用が特徴的であり,規模の経済は農業機械などの固定資本の分割不可能性にもとづくものとされているからである。本研究では上の命題が該当しない一事例として,機械化があまり進んでいない発展途上国型の農業であるにもかかわらず,規模に関して収穫逓増であるメキシコ・モレロス州の稲作を分析した。なお,同地域の稲作は農家一戸当たり平均規模が3ha程度であり,日本とそれほど大差がなく,潅漑田へ移植する方式がとられているが,その収量は州平均で1ha当たり7~8t(籾)と途上国としては非常に高い。
成果の内容・特徴
  1. モレロス州きっての稲作地帯であるクアウトラ県で15戸の稲作農家を訪問して聞き取り調査を行った。その結果,(表1)のような労働投入が行われていることがわかった。なお,機械は耕起作業にトラクタ-が使用されるのみであり,それ以外は殆どすべて人間労働に頼っていた。実際の農作業の大部分は雇用労働者により行われていた。
  2. 生産関数型を荏開津典生と茂野隆一により開発されたもの(ES型生産関数)に特定化して計測を行った。その理由は彼らの生産関数は稲作技術を生物化学的技術(BC技術)と物的投入技術(M技術)に分割して,両者をそれぞれ別個に考察することが可能なためである。その結果,BC技術については,収穫一定,M技術については収穫逓増であることを確認した。
  3. 上の結果が得られた理由は,移植や収穫などの肉体労働は経営規模と強い相関を持つが,鳥追いや圃場管理などの見張り労働は経営規模との相関が弱いことにより,総労働投入も経営規模との相関が弱くなってしまうことによることがわかった。
    (表2)
成果の活用面・留意点 本研究は,途上国農業に関しても規模経済が存在することを提起し,途上国農業には規模の経済が存在しないとする一般的な見方に注意を喚起するものである。本研究の結果は,メキシコ・モレロス州という一地域の稲作を分析したものであり,メキシコ全体にこの分析結果を適用するためには今後の研究が必要である。
図表1 228364-1.gif
図表2 228364-2.gif
カテゴリ 機械化 経営管理 圃場管理

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