タイトル |
バングラデシュ農村非制度金融の新動向―階層間金融フローの「逆転」をめぐって― |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1995~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
最近のバングラデシュ農村の非制度金融は,貸借に参加する村人の数,金額いずれでみてもかなりの程度発達しており,金利も高い。また,通説に反し,土地所有階層別の金融フローは,全体として下層から上層へ向かっている。
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背景・ねらい |
バングラデシュの非制度金融は,長らく農村の上位階層が下位階層に高利で消費金融を貸し付け,収奪する場としてとらえられてきた。しかし,1990年代初頭に実施した調査の結果,逆に下位階層が上位階層に高利で貸し付ける場であることが判明した。本研究は,こうした非制度金融の貸付条件,期間,金利などの実態を明らかにするとともに,階層間金融フローの「逆転」の背景にある農村経済の動向を,1980年代に進展した「緑の革命」との関連を中心に分析することを目的としている。
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成果の内容・特徴 |
- 非制度金融は,農地用益権の移転を伴う長期金融及びそれ以外の短期金融に大別される。貸付期間,金利(年利)は,前者が数年,25~60%,後者が数カ月,50~120%であり,前者が農村の非制度金融の大半を占めていた。
- 土地なし,0.5エーカー未満の2つの階層が黒字主体,0.5~1.0,1.0~2.5,2.5~5.0,5.0エーカー以上の4つの階層が赤字主体であった(調査村の一戸当たり所有面積A村1.11エーカー,D村0.69エーカー)。一戸当たり平均貸付額は下位階層の年間所得にも匹敵する額であること,土地所有面積を基準にした階層区分はほぼ所得階層に一致していることが確認された。
- 資金需要は,短期金融については主に管井戸や小商売の運転資金であったが,長期金融についてはデータが得られなかった。
- 下層の資本蓄積は,非農業就業機会の発達や下層向け制度金融の浸透だけでは説明できない。1980年代に急進展した「緑の革命」による労働需要の拡大に伴う就業機会の周年化,賃金率の上昇等によるところが大きいものと考えられる。
(表1) (表2)
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成果の活用面・留意点 |
本研究は,グラミン銀行など農村下層向け制度金融による貧困軽減政策の有効性について,再検討の必要性を喚起し,従来のツー・ステップ・ローンによる農業開発協力を評価する際の新たな視点を提供するものである。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
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