タイトル |
マレーシアにおける貧困撲滅と所得分配 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
マレーシアのマレー人稲作村に関して、近代化技術の導入と農外就業機会の拡大によって、農家の所得水準が大幅に向上した。しかし一方では、高齢者世帯を中心とした絶対的貧困層が滞留し続ける可能性がある。
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背景・ねらい |
マレーシアでは、農業部門の貧困軽減のために、農業近代化が積極的に推進されてきた。 また、高度経済成長の農村部への波及に伴い農村労働市場にも大きな変化が起こっている 。本研究では、かかる農業近代化と農村労働市場の変化が、稲作農家の貧困撲滅と所得分 配に与えた影響を解明することを目的としている。
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成果の内容・特徴 |
- 1960年代後半以降、米の栽培技術が顕著に向上した調査地域では、単収の増加、省力技術
の導入によるコスト削減、さらに政府による稲作補助金制度の強化によって、農家の稲作 所得は概して急増した。加えて、省力技術の導入によって節約された労働力が、農村部で の雇用促進政策によって新たに創出された農外就業機会に投下されたことから、余剰労働 力の問題が発現することなく、農外所得も順調に増加した。また、農外就業機会の拡大は 、稲作経営規模に起因した農家間の所得格差の是正にも大いに貢献した。
- しかし、政府の稲作補助金制度は、大規模経営層に有利に作用したために、絶対的貧困層
の所得向上には寄与しなかった。さらに、絶対的貧困者の多くが高齢・低学歴であること から、農外就業においても低報酬・不定期雇用を特徴とする雑業にしか従事できない状況 にある。このため、今後中・高学歴取得者と高齢・低学歴の貧困者との間の所得格差が徐 々に拡大していく可能性がある(労働市場の分節化とそれに伴う階層間所 得格差の拡大)。
- マレー人の稲作村では、農家全体としての所得水準は大幅に向上したものの、絶対的貧困
の撲滅はまだ完全ではない。世帯主が高齢・低学歴であることから農外所得の獲得機会も 限定されている絶対的貧困層は、支払小作料・地価が高騰している中で経営規模の拡大も 困難であり、絶対的貧困層として滞留する可能性が高いので、そのための対策が必要であ る。 (表1) (表2) (表3) (表4)
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成果の活用面・留意点 |
本研究は、アジア開発途上国における農業技術進歩の農家経済への影響や、経済発展に伴 う労働市場の変化が所得分配に及ぼす影響を分析する際に、新たな視点を提供するもので ある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
経営管理
コスト
栽培技術
大規模経営
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