タイトル |
家計の変容とコメ消費 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
家計のコメ消費について、従来の需要分析に家計の変容が消費に影響する部分を加え、消費構造変化の予測手法を開発した。傾向的な減少を続けるコメ消費の背景には、家計の変容を体現した賃金率や世帯人員の変化がきわめて重要な役割を果たしている。
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背景・ねらい |
わが国のコメ需要関数の計測は、主に農水省『食料需給表』や総務庁『家計調査』から、 コメの消費量を自己価格や関連財価格、所得(消費支出)といった経済変数で説明するも のであった(表1)。このうち家計のコメ消費につい ては、「家計」を消費単位とする『家計調査』のデータが用いられる。しかし、消費単位 である「家計」自体がダイナミックに変容してきた今日までの状況を考慮すれば、従来の 方法論は消費主体としての枠組みである「家計」の変容がもたらす影響を捨象していると 考えられる。 需要サイドからコメの過剰問題を改善するためには、家事時間の減少や世帯規模の縮小等 にみられる「家計」の変容を需要分析に取り込み、新たな枠組みから、傾向的な減少を続 けるコメ消費の背景にあるメカニズムを解明する必要がある。
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成果の内容・特徴 |
- コメの消費を、(1)従来の需要分析における経済変数(自己および関連財価格、所得あるい
は消費支出)で説明される部分と、(2)家計が自らの行動を通じて変容し、それがコメの消 費に影響した部分の2つから成ると想定し、新たな分析枠組みを提示した。
- 上記(2)について、「炊飯」を家計による生産活動の1つとして捉え、「賃金率」と「世帯
規模」の変化が「家計の時間配分(家事労働、雇用労働、余暇への配分)」におよぼす影 響を理論モデルで表現した。そこからコメの需要関数を導出し、実証分析を行った。
- 計量分析より、以下の点が明らかとなった(表2)。
定質賃金率の上昇は生産コストの上昇を通じて家計内で生産される財から市場購入財への 代替を引き起こし、同時に家事労働時間の減少と雇用労働時間の増加をもたらす。すなわち 、賃金率の上昇は家計のコメ消費量を減少させる。また、世帯規模の縮小は家事労働の生産 性を低下させ、家計内で生産される財の生産コストを増大させる。その結果、家計内で生産 される財から市場購入財への代替が生じる。すなわち、世帯規模の縮小は一人あたりコメ消 費量を減少させる。
- 上記の要因分解の結果、次の点が明らかとなった(表3)。
傾向的な減少を続けるコメ消費の背景には、家計の変容を体現した賃金率や世帯人員の変化が きわめて重要な役割を果たしている。また、賃金率や世帯人員の役割を明示的に組み込んだ需 要分析の枠組みでは、コメの価格弾力性も統計的に有意な推計結果となり、家計消費の背後に は価格メカニズムが機能していることを示している。ただし、賃金率や世帯人員と比較して、 価格の寄与率は経年的に低下してきており、表面上はその効果が識別されにくくなっている。
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成果の活用面・留意点 |
本分析は、有効な消費対策を検討するための基礎資料として活用されることが期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
コスト
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