税再配分と特別税によるCVM評価額の比較−米国での地下水保全価値への適応−

タイトル 税再配分と特別税によるCVM評価額の比較−米国での地下水保全価値への適応−
担当機関 農業総合研究所
研究期間 1997~2000
研究担当者
発行年度 1997
要約 税再配分と特別税によるCVM評価額は、一致する保証はなく、公共財が過剰供給の場合、税再配分の方が特別税より大きくなる。また、税再配分の評価額に対する所得の効果は、必ずしも正であるとは言えない。
背景・ねらい 非市場財の経済価値を評価するコンティンジェント評価法(CVM)は様々なバイアス
を持つことが知られている。そのようなバイアスを避けるために、商務省国家海洋大気管
理局(NOAA)によるCVパネルが示したガイドラインを見ると、金額評価質問については住
民投票形式が望ましいとしている。この住民投票形式をCVMの設問に置き換えるならば、
多くの場合、非市場財に対する支払意志額(WTP)を特別税で評価するか、あるいは既に
納められた税金の中からの税再配分額で評価することになるであろう。しかしながら、こ
れまでは税再配分と特別税とは明確に区別されてこなかった。そこで、本研究では両支払
形態の差異を理論的・実証的に明らかにする。なお、実証分析では、米国で人口の51%が
飲料水として利用している地下水について、その保全価値を評価する。
成果の内容・特徴
  1. 理論分析より、特別税と税再配分の評価額は必ずしも一致する保証はなく、追加的可
    処分所得の限界効用の方が追加的公共財の限界効用よりも大きいとき、言い換えれば、税
    金によって給付される公共財は過剰供給であると消費者が判断したときには、評価額は税
    再配分の方が特別税よりも大きくなること、また、逆の場合には逆の結果となることを明
    らかにした。
  2. 実証分析の結果、税再配分の評価額は特別税のそれよりもよりも有意水準1%で大き
    かった。また、水質保全計画によって経済活動を制約される人々のマイナスの評価も考慮
    するため、自由回答方式での付け値をトービット・モデルによって分析した結果、評価額
    は特別税で平均43.6ドル/世帯年に対し、税再配分では79.6ドル/世帯年となった。
  3. この評価額の政策的意味について検討するため、米国環境保護局が今後20年をかけて
    行う予定の上水処理計画の費用と比較すると、計画費用は1,000世帯当たり約2.9万ドル
    (約4.6億円)であり、他方、本研究で推計された1,000世帯当たり総支払意志額は、特別
    税で約3.5万ドル、税再配分では約6.5万ドルとなり、したがって、上述の上水処理計画は
    米国民の合意が得られる予算額であるといえる。
  4. 地下水の水質悪化防止のためのWTPに対する所得の効果については、理論分析より、
    地下水が上級財ならば、特別税の場合は正であるが、税再配分の場合は必ずしも正になる
    とはいえず負の符号も取りうることを導出した。
  5. この点についてトービット・モデルによる実証分析を行った結果、特別税の場合、所
    得の推計係数は正であり1%水準でゼロと有意差を持った。これに対し税再配分の場合、
    所得の推定係数はゼロと有意差を持たず、理論分析の結果と一致した。
    (表1), (表2)
成果の活用面・留意点 評価額に与える所得の効果を減少させたい場合には、税再配分による支払形態は有効な貨
幣的測度になりうると考えられる。他方、特別税と税再配分をどのように使い分けていく
のか等について検討が残されている。
図表1 228419-1.gif
図表2 228419-2.gif
カテゴリ 評価法

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる