タイトル |
ドイツにおける条件不利地域対策の実態 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1994~1996 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1997 |
要約 |
ドイツにおける条件不利地域対策の実際の意味を調べた結果、農村部の田園景観を維持し、かつ人口減少を防ぐという同対策の本来の趣旨とは異なり、小規模農家に対する直接所得補償措置の一つとなっていることが明らかになった。
|
背景・ねらい |
EUの共通農業政策(CAP)の下では、20年余にわたって農業条件が不利な地域の農家に対 する所得補償(条件不利地域対策)が行われている。本研究は、特にドイツにおける同対策 の展開を分析し、さらにその具体的な意味を明らかにするために、南西部のバーデン・ヴュ ルテンベルク州を事例にとりあげた。
|
成果の内容・特徴 |
- EUの条件不利地域対策は本来、農業の永続によって田園景観を守り、かつ人口減少を防
ぐという趣旨の政策であるが、CAPの中では80年代半ばから南欧諸国の底上げという意味 合いを強めている。ドイツにおいては小規模な農家に対する所得政策としての意味合いが強 まっている。そして90年の東西統一による財政難を契機に、条件不利地域の広さ、補償金受 給経営数の多さ、図1に示されるような財政支出の増大 に対する批判が高まっている。
- 南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州を事例に、条件不利地域対策の意味を調べた結果、
まず条件不利地域においては農家数は減少しているものの非農家人口は増えており、農家に 対する所得補償によって人口を維持するという本来の目的は達せられていない。
- また、1992年CAP改革により農家に対する直接所得補償措置が多様化する中で、同対策
の所得対策としての意味は相対的に低下している(表1)。
- さらに同対策は、「田園景観の維持」のための政策としては内容的に不十分であり、州独
自の農業環境政策のような効果が期待されないことから、州政府は補償金の一部カットを提 案している。
- 以上のことから、条件不利地域対策においては本来の趣旨と実際の意味が乖離してきてい
ることが明らかになった。
|
成果の活用面・留意点 |
EUはすでに1997年7月、「2000年以降の政策方針」(Agenda 2000)の中で、条件不利 地域対策の改革案を示しているが、本研究はそれ以前の状況に基づいている。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
カテゴリ |
経営管理
|