タイトル |
フランスの粗放型畜産と直接所得補償 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
フランスの条件不利地域に立地する粗放型畜産を対象とした直接所得補償措置は,中長期的な構造再編を阻害することなく,社会的な摩擦を短期的に緩和させるものとして機能した。
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背景・ねらい |
先進国農政における農業所得政策では,価格支持から直接所得補償に移行しつつある。 条件不利地域に立地し,もっとも早くから直接所得補償の対象となってきたフランスの粗 放型畜産をとりあげ,直接補助金制度の背景や仕組みの含意について検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 価格下落と構造再編:粗放型畜産はフランス農業の中で,所得が最も低位にある部門
であり,その生産者価格は傾向的に低落している。条件不利地域に立地する粗放型畜産も, フランス農業一般の構造再編メカニズムの例外をなすものではなく,フランス農業全体に 比べて遜色ないテンポで構造再編は進んだ(表1)。
- 社会的摩擦の緩和:農業経営所得に占める補助金比率が一貫して増大しているにもか
かわらず,粗放型畜産の所得水準は低落した(図1, 図2)。粗放型畜産経営に対する直接所得補償は,長 期的に農業経営数を維持するというものではなく,生産者価格低落が引き起こす構造再 編の速度を弱め,社会的摩擦を短期的に緩和させるものとして機能した。
- 部門間利害の調整:粗放型畜産部門に対する所得補償政策の形成は,共通農業政策の
基軸である穀物,酪農に対する政策の波及の産物としての側面を持った。すなわち,ある 部門に加えられる農業政策の変更が別のある部門に及ぼす損失を補填する手段が直接所得 補償である。
- 新たな補償の根拠:近年,粗放型畜産に対する直接所得補償の手法に,飼料基盤もし
くは草地基盤に対する飼養密度による補償対象の差別化が加えられた。これは土地集約度 の上昇を抑止することで供給過剰を防止するとともに,農村景観の維持や生物多様性の保 全機能が認められる低生産性農地の維持に対して誘因を与えることがねらいである。
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成果の活用面・留意点 |
粗放型畜産の市場環境は依然として悪化の傾向にあり,所得補償の必要性がさらに高ま ると見込まれている。今後の直接所得補償をめぐる配分をめぐっては,強い財政制約下に あることを念頭に検討していく必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
経営管理
なす
乳牛
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