タイトル |
農業公社を核とした中山間地域資源の管理方向 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1998~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
中山間地域では農地の荒廃を防ぐために農業公社を設立し,農家に代わって直接的に農地管理を行う自治体が増えている。しかし,今後さらに増加すると予想される管理耕作や農作業受託を公社のみで対応するには人員,財政の両面から限界があり,公社には担い手育成機能の強化に加え,事業の多角化,農地管理主体間の調整機能の発揮が求められている。
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背景・ねらい |
中山間地域の農林地,水等の地域資源を持続的に活用するためには,個別農家の生産を補 完する営農集団や農業公社,農協,土地改良区,森林組合等の地域諸機関(地域資源管理 組織)の活性化を図るとともに,相互の連携を強化することが大きな課題となっている。 本研究は,農業公社を地域資源管理の核に据え,水田の荒廃防止に取り組んでいる二つの 町の事例を基に,中山間地域における農地資源(特に水田)管理の将来方向を検討した。 なお,事例として取り上げたのは島根県T町(山間農業地域)および大分県K町(中間農 業地域)である。
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成果の内容・特徴 |
- 荒廃農地の発生・農地資源管理の後退に対して全国各地で試みられている取り組みを整理
すると,a.揺らぎ始めている農地継承システムの再構築,b.集落営農等,集落を基盤とす る農地資源管理の仕組みの再構築,c.第3セクター設立等による農地資源管理主体の再構 築,d.限界的農地の公的な管理,e.農地の市民的利用,f.市民参加による農地管理の仕組 みの構築という方向がある。かかる多様な取り組みの中で,荒廃農地対策として多くの市 町村から強い期待が寄せられているのが市町村農業公社による農地管理である。
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島根県T町は,大区画圃場整備が実施され,大型機械の導入や集団転作が容易な状況とな っている。また,圃場整備の実施を契機に集落営農の組織化が積極的に行われており,そ の結果,多くの集落で組織を中心とした集落完結型の水田管理が行われている (表1)。このため,町内の水田管理にあたっては農 業公社と集落営農組織との間で明確な「棲み分け」が行われている。農業公社は当面,組 織化が困難な集落の水田管理を稲作作業受託や管理耕作で直接補完しつつも,将来的には 近隣集落の組織や個別担い手に管理を移譲する方向にある。
- 大分県K町では,担い手不足が深刻化する中で,農業公社自体が全地域的に土地資源管理
を行わなければならない状況となっており,農業公社が直接行う作業受託面積が年々増加 している(表2)。同町では,組織化されている集落 においても担い手が不足している状況にあることから,将来的には未整備田を中心に農地 の一挙的放出が予想され,担い手の育成と広域的な土地資源管理の体制づくりが緊急の課 題となっている(表3)。
- 中山間地域において公社を核とした農地資源管理を図っていくためには,当面の間,農業
公社自体が直接的な農地管理を行うことはやむを得ないとしても,将来的には集落営農組 織や個別農家によって農地管理が完結できるようにするための,担い手育成や秩序のある 農地利用を図るための各農地管理主体間の調整に積極的にかかわっていくことが極めて重 要である。また,精算のとれない作業受託部分を抱えている限り,独立採算による公社運 営は極めて厳しいといえることから,事業の多角化を図る等によって収益性(企業性)の 確保に努力するとともに,公社の活動に対して継続的に町民のコンセンサスを得ていくこ と(公共性の確保)が必要である。
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成果の活用面・留意点 |
水田管理のあり方と,それ以外の地域資源(畑,樹園地,水等)にどのような相違が生じ ているか比較考慮する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
くこ
水田
中山間地域
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