タイトル |
中山間地域における定住人口の維持と農地資源管理 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1998~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
中山間地域における過疎・高齢化の進行は山間畑地型地帯で特に顕著であり,これら地域の定住人口は所得水準に強く規定されている。また,定住状況によって農地資源の管理状況は大きく異なり,過疎・高齢化が進行する地域ほど農地の減少度合いと共に,減少した農地が未利用地,荒地となっている割合が高い。
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背景・ねらい |
中山間地域の活性化を図っていくためには,非農家世帯をも含めた地域人口が一定数確保さ れ,しかも人口の再生産が継続的に可能となるような,適正な年齢構成の維持が不可欠であ る。本研究では,国勢調査等の市町村別データを用い,過疎化が加速している中山間市町村 の定住人口の維持要件を計量分析から具体的に析出することを課題とした。また併せて,地 域の定住状況と農地資源の管理状況との関連を,旧市町村別データによる分析から検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 中山間地域における過疎化は,中間農業地域と山間農業地域でその態様が大きく異なってお
り,特に,山間農業地域で2割近い市町村が20年間に30%以上の人口減少となっている等, 過疎問題が深刻化している。他方,高齢化は,既に高齢者比率の高かった西日本の山間農業 地域で,その進展速度が早く,これら地域では幼年人口比率のみならず,地域社会を支えて いる生産年齢人口の比率さえも低下する傾向がみられる。なお,過疎化と高齢化の進展状況 の相互関連をみると,両者の相関は極めて強く,中山間地域の中でも特に水田率の低い畑地 型地帯で,過疎化と高齢化が同時に進行している(図1) 。
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「人口維持型」,「過疎進行型」の市町村をサンプルに用い,判別分析により中山間地域の 定住人口の維持要件について検討したところ,中間,山間農業地域ともに,人口1人当たり 課税所得が最も大きな影響を及ぼしており,とりわけ山間農業地域で同指標の影響が際だっ て大きい(表1)。また,中間農業地域では,事業所の 規模やDIDへの時間距離といった他産業への就業条件を表す指標とともに,専業的な農家 の割合を示す上層農家率が有意な指標として析出されており,農業もまた重要な就業の場で あることが確認される。
- 1990~95年の耕地の変化を,旧市町村の人口動態が対照的な二つの類型間で比較すると,過
疎・高齢化が進行している旧市町村において耕地の減少度合いが大きい (表2)。また,減少した耕地の現在の主な用途をみる と両類型間では全く異なっており,「定住人口維持型」の旧市町村では圧倒的多くが住宅敷 地等の地域開発に農地が供されているのに対し,「過疎・高齢化進行型」の旧市町村では過 半が主に未利用地,荒地となっている。
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成果の活用面・留意点 |
定住人口の維持要件に係る判別分析は市町村を分析単位に,定住状況と農地管理の関連分析 は旧市町村を分析単位に用いており,前者の分析対象には北海道と沖縄を含まない。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
水田
中山間地域
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