タイトル |
村落の封鎖性の測定方法 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1998~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
村落の封鎖性を数量的に把握するために、村落内外の家単位の社会関係(つきあい)相手数を測定し、比較する数量尺度を考案した。2つの集落において調べた結果、本家 分家関係が維持されている集落の方が封鎖的であることが明らかになった。
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背景・ねらい |
日本の村落社会は一般的に、人口の流動化や交通・通信機関の発達により封鎖的でなくなっているとされているが、その封鎖性の程度が数量的に把握されることはなかった。本研究では、家単位の社会関係(つきあい)の相手数を村落内と村落外とで比較し、村落内の相手数の方が多いほど封鎖的であると規定した上で、2つの集落について封鎖性の程度を測定するとともに、その程度の違いが何によってもたらされるのかを明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 調査対象としては、家単位の社会関係が比較的残っている2つの集落を選定した。長野県のK集落は61世帯からなり、その7割が4つの同族集団(本分家関係からなる集団)のいずれかに属している。一方、山形県T集落は20世帯からなり、その45%が3つの同族集団のいずれかに属している。
- 村落内の社会関係(つきあい)の相手数(Yin)と村落外のつきあい相手数(Yout)を集計し、両者の差を調査対象世帯数(n)で除したものが封鎖性の程度であるとすると、(Yin-Yout)/n=(Pin-Pout)/n+(Qin-Qout)/nとして示される。ここで、Pinは「誕生祝い・重要事相談」のやりとりを行っている村落内の相手数、Poutはその村落外の相手数、Qinは「おすそわけのやりとり」を行っている村落内の相手数、Qoutはその村落外の相手数を表している。上記2集落での測定結果は次頁の通りである。2集落ともに「誕生祝い・重要事相談」の相手は村落外に圧倒的に多いのに対し、「おすそわけ」の相手は村落内に多く、全体として村落外のつきあい相手数の方が多いという結果になったが、長野県K集落の方が山形県T集落よりも村落内のつきあい相手数が多く、したがって封鎖性が強いことが示される。
- 村落内のつきあい相手数(Yin)、村落外のつきあい相手数(Yout)それぞれについて、村落内の親戚戸数(X1)、村落外に本部のある団体への参加件数(X2)を変数とする重回帰分析を行うと、K集落では村落外の団体への参加件数(X2)が村落内のつきあい相手数(Yin)と正の相関を示すのに対し、T集落では逆相関を示している(表)。K集落では村落外の団体への参加によって村落内のつきあいが阻害されにくいことを示唆している。
- K集落の方が本分家関係により規定されており、そのことが封鎖性の高さをもたらしていると考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
より説明力のある尺度を得るためには、上記以外の社会関係をも数量的に把握する必要がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
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