タイトル |
収入保険方式による農業経営安定化対策の効果 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1999~2000 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1999 |
要約 |
北海道及び東北地方の水稲作農家を対象に行った試算によれば,現行の農作物共済のような収量保険方式に比べて収入保険方式の方が農家にとって魅力的であるためには,保証水準を十分に高く(足切り水準を低く)設定する必要がある。
|
背景・ねらい |
農政の見直し等に伴い,市場原理を活用した農業政策へ移行する動きが本格化しており,農業収入の低下という農業者の経営リスクを緩和するための具体的な経営安定措置(セイフティ・ネット)の検討が喫緊の課題となっている。本研究では,保険的な手法を用いた農業経営安定化対策として世界に先駆けて実施されているアメリカの収入保険プログラムの運営状況を整理・分析するとともに,水稲作農家を対象とした試算によって,わが国において同種の制度を導入した場合の効果等について分析する。
|
成果の内容・特徴 |
- アメリカでは,収入保険プログラムを含む農業保険制度がセイフティ・ネット政策の柱の一つに位置づけられており,収入保険への加入も増加してきている。1999年度には農業保険加入面積に占める収入保険加入面積の割合は,図1のとおり,とうもろこしで41%,大豆で34%となっており,これら作物の主産地の中には,表1に示すように,農業保険加入面積の半分以上が収入保険に置き換わっているところもある。
- わが国の水稲作農家を対象に,農作物共済の被害率データ(過去10年間)に基づいて農家別・年次別の水稲収穫量を推計し,これと自主流通米販売価格(農林水産省統計情報部『農村物価統計』)を用いて,収量保険方式と収入保険方式の二つの方式による保険金の支払状況について試算を行った。
その結果,北海道を例にとると,図2のとおり, ア)冷害年(図2では平成4年及び平成5年)には,低収量による収入減と高価格による収入増が相殺されることによって,収入保険方式の方が収量保険方式よりも金額被害率(保険金支払額を保険金額で割ったもの)が低く,保険金の支払額が少なくなること, イ)高収量であっても価格が低下する年(図2では平成9年)には,収量保険方式では支払われないはずの保険金が収入保険方式では支払われること等,収入保険方式の導入により理論的に予想される効果が,試算によって確認された。
- また,図3のとおり,保証水準が9割(足切り水準が1割)の場合には,北海道を除く各県で,全農家のうちの約80%以上の農家について,収入保険方式の方が収量保険方式よりも金額被害率が高く,より多額の保険金が支払われている。このことは,各農家にとって収入保険方式の方が収量保険方式よりも魅力的である(より多額の保険金が支払われる)ためには,保証水準が十分に高くなければならないことを示している。
|
成果の活用面・留意点 |
収入保険に関する本試算結果は,過去の価格政策の下での収量と価格の関係(データ)に基づくものである点に留意する必要がある。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
図表4 |
 |
カテゴリ |
経営管理
水稲
大豆
凍害
とうもろこし
|