タイトル |
アメリカ農業における垂直的調整の増大傾向とバイオテクノロジーとの関連性 |
担当機関 |
農業総合研究所 |
研究期間 |
1999~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
アメリカ農業では,垂直的調整が様々な作目で一般化すると共に,大規模経営において多用される傾向がある。また遺伝子組換え作物による品質改良作物の流通や,組換え農産物回避志向が,分別管理システムなど垂直的調整の増大に結びついている。
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背景・ねらい |
アメリカ農業構造においては近年,集中化,垂直的調整,グローバル化が一層進展しており,こうした変化は「農業の産業化(industrialization of agriculture)」と呼ばれている。本研究では,特に垂直的調整の側面に注目して,最近の産業化動向を把握すると共に,近年のバイオテクノロジーの進展が新たな流通システムを要請し,その結果として農業の垂直的調整に拍車が掛けられていることを明らかにする。なお本研究では,穀物生産に対象を限定して,その背景要因と今後の産業化の進展可能性について検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 垂直的調整(契約生産等)は,従来ブロイラーや加工野菜などでは一般的に見られていたが,最近は養豚で急増している。またこれまでほとんどなかった耕種作物においても契約生産が増大していることが特徴的な点として指摘できる。
- 垂直的調整について販売規模階層間の差をみると,より大規模経営の方が相対的に契約生産等に積極的であることが窺われる(表1)。これは1996年農業法において不足払い制度が廃止され,市場価格の不安定性が増大する中,経営がリスク分散を図るために積極的に契約生産等を導入しようとしている動きが反映したものと考えられる。
- また別の背景として,近年におけるバイオテクノロジー等の要因が挙げられる。これら技術開発により品質面などアウトプット特性に改良を加えた作物が新たに登場するようになっているからである(表2)。こうした作物生産は,垂直的な調整をもたらし,分別管理(IPハンドリング)システムの形成など,流通システムにも影響を及ぼしている。
- 日本へも,これら垂直的調整によって生産され,IPハンドリングで輸入される農産物があるが,現在はバイテクの成果というよりは,納豆用大豆や高油糧トウモロコシ,ポストハーベストフリートウモロコシなど,従来育種技術を用いた製品差別化農産物である。
- 99年夏以降,日本政府による遺伝子組換え(GMO)食品の一部義務表示化の決定を契機として,非GMO作物への切り替えが流通・食品業界を中心に進むと共に,その調達のために,IPハンドリングが広範に用いられるようになった。GMO回避志向が続くとすれば,今後もIPハンドリングが重要な穀物調達方式になることが予想される。こうした動きは,アメリカの生産者が今後さらに垂直的調整に関わっていくことになり,アメリカ農業の産業化がさらに進展すると考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
GMO農産物の流通や消費動向に関しては,事態が非常に流動的であるので,本研究成果の現実妥当性についても慎重な判断が必要である点,留意すべきである。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
育種
加工
管理システム
経営管理
大規模経営
大豆
とうもろこし
鶏
豚
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