タイトル |
中山間地域における土地利用型水田酪農経営の成立条件 |
担当機関 |
四国農業試験場 |
研究期間 |
1993~1993 |
研究担当者 |
恒川磯雄
瀧本隆夫
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発行年度 |
1993 |
要約 |
中山間地域における土地利用型水田酪農経営の安定化には、圃場分散性など土地基盤整備による飼料基盤の拡充が不可欠である。また、中山間地域という土地条件が施設の設置場所を規制するため、頭数規模拡大には上限があり、借地による規模拡大や作業受委託の促進で、酪農部門とともに稲作を中心とした他部門所得の拡大が必要である。
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背景・ねらい |
中山間地域の水田農業は担い手の脆弱化が著しく進行ており、その確保は差し迫った課題である。ここでは酪農経営を取り上げて、これが地域農業の担い手として成立する条件を、主として土地条件の現状と整備方向、農業所得の構成からみた経営上の課題と改善方向、地域農業の展開条件の側面より考察する。
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成果の内容・特徴 |
- 対象地とした土佐町の酪農は、1991年現在戸数
15戸・飼養頭数370頭( 1981年は19戸・ 316頭)である。酪農家は、借地(調査農家 4戸の借地面積率は16~ 41%)や稲作の作業受託など稲作と飼料作の両面で水田と結合して立地し、土地利用の中心的な担い手となっている。 (
表1 )
- 4戸の調査農家の農業所得に占める酪農部門の割合は
51~94%で基幹作目となっているが、中山間地域という土地条件が施設の設置場所を規制するため、飼養頭数規模の拡大には上限がある(特に No.2、No.4農家)。したがって、当面の農業所得拡大の方策は酪農部門の経営改善と、稲作を中心とした他部門所得の拡大に求められる。(表 1)
- 乳価や牛肉価格の低迷で酪農所得は低下傾向にあり、その収益性向上には園芸農家への堆肥販売の強化と、良質飼料の自給率向上でコスト低減を図る必要がある。自給飼料の生産コストは
TDN当たりでヘイキューブや購入乾草に対し 72~88%と試算できる。(表 2)
- 稲作部門の所得拡大は借地による規模拡大と作業受託量の増大に求められ、基盤整備を前提とする。調査農家
4戸の全水田面積に対する水稲単作割合は 40%を占め、その土地条件は面積狭小・道路未整備・排水不良など悪条件の圃場の割合が高い。これを改善し、貸借を促進し、稲作部門の拡大と飼料基盤としての水田の活用を図る必要がある。(表 3)
- 調査対象地域では、農業構造改善事業以来酪農の産地化に取り組み、酪農組合の設立や公共放牧場設置等が行われた。さらに補助事業・人工授精組織・家畜市場など肉用牛部門と結合した産地活動を行っている。中山間地域における酪農経営の存立にはこのような農家集団としての活動や産地形成へ向けた組織的対応が不可欠の前提をなしている。
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成果の活用面・留意点 |
肉用牛の産地でも上記の条件の多くが該当する。こうした地域では、畜産農家を地域農業の担い手として捉え、早急に農地流動化、基盤整備、施設導入等を推進する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
規模拡大
経営管理
コスト
水田
中山間地域
低コスト
肉牛
乳牛
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