タイトル |
イネの未受精胚カルスを用いた効率的なホモ個体の作出法 |
担当機関 |
愛媛県農業試験場 |
研究期間 |
1997~1999 |
研究担当者 |
玉置 学
兼頭明宏
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発行年度 |
1999 |
要約 |
イネの出穂前1から3日の幼穂を包む葉鞘内へ2,4-D100~1,000ppmを注入し、30日後に肥大した子房より未受精杯由来のカルスを採取し、再分化培地へ置床することで、効率よく、白然倍加したホモ個体が獲得できる。
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背景・ねらい |
イネの品種改良では、育種年限短縮のために葯培養法が利用されているが、カルス化及び再分化率が低く、品種間差も大きい。また、再分化個体にアルビノが多発する欠点がある。 そこで、半数体細胞である未受精胚(胚嚢細胞)に注目し、カルス化させた後再分化させ、ホモ個体を作出する方法について検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 注入する2,4‐Dは、濃度は100~1,000ppmで未受精胚カルスの形成が良い。
- 未受精胚カルスの形成と再分化は、品種、交配組み合わせで差があるが、供試した品種、交配組み合わせのなかで緑化個体再分化率が最も低いヒノヒカリにおいても、27%の高い緑化個体再分化率があり、また、アルビノ発生も少ないことから、多くの品種、交雑個体に利用できる(表1)。
- 出穂前1~3日の注入処理で未受精胚のカルス化にほとんど差がないことから、1株当たり1~2本出穂後に全ての穂へ注入処理が可能となり、安定的な未受精胚カルスの獲得ができる(表2)。
- 未受精胚カルスの採取時期は、注入処理後30日頃が適期である。20日では子房が細胞液で満たされているため、穎果より子房を取るとき破裂し、培養時にコンタミが多発する。
また、40日以降では、カルスの老化により再分化能が低下する(表3)。 - 緑化個体の再分化培地は、葯培養に用いる再分化倍地の窒素源を1/2にしたMS基本培地にNAAlmg/1+BA4mg/1+ソルビトール30g/1+ショ糖30g/l+寒天8g/1pH5.8が適している。再分化は、置床後7日頃より始まり、40日でほぼ終了する。
- 再分化した個体は、次世代において分離せず、葯培養で得られる個体と同様ホモ個体である(表4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 幼穂を包む葉鞘へ注入する2,4-D(pH6.5程度に調整)は、葉鞘上部へシリンジで穴を開けた後、葉鞘の合わせめ付近より行う。
- 未受精胚カルスの生育は、注入処理後の気温により異なるため、カルスの採取時期は30日目を中心に考慮する必要がある。
- 末受精胚カルスを含む子房を10℃で5日間貯蔵しても、再分化率が殆ど低下しないことから、計画的に培養作業が行える。
- アブラムシの発生が多くなるため、防除は十分に行う。
- 再分化率向上のため、カルス培養容器は、バイオボトルを用いると良い結果が得られる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
育種
品種
品種改良
防除
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