タイトル |
周年マルチと点滴潅水施肥による極早生温州の高品質果実生産 |
担当機関 |
四国農業試験場 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
吉川(山西)弘恭
中尾誠司
長谷川美典
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発行年度 |
2000 |
要約 |
極早生温州では周年マルチと点滴潅水チューブによる潅水施肥の併用により、気象条件に左右されずに高品質果実安定生産ができ、マルチ被覆・撤去・肥培管理の省力化と、減肥による環境保全型栽培が可能となる。
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背景・ねらい |
極早生温州ミカンは一般的に糖度が低く当該シーズンのカンキツの低価格を誘引し易い。また、各地に非破壊品質選果機が導入され、果実ごとの内部品質による選別が可能となったため、栽培農家は高品質果実生産を迫られている。一方、高品質化のために広く用いられているマルチ栽培は被覆・撤去作業の労働負担が大きく、栽培面積の拡大が困難である。また、過度の乾燥ストレスによる高酸果実の発生、樹勢の低下が懸念されており、気象条件に左右されず、樹勢を衰弱させない高品質・省力・安定栽培技術がもとめられている。
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成果の内容・特徴 |
- 点滴潅水チューブによる潅水施肥により、周年マルチ条件での栽培が可能となる。透湿性マルチの張り替えは3年に1回行い、被覆・撤去の労力を通常のマルチ栽培の1/3に削減できる。施肥は5月下旬から8月下旬まで窒素濃度150ppmの液肥を10L/樹・週3回、収穫後11月下旬までは週2回、乾電池駆動電磁弁と液肥混入機によって自動的に行い、肥培管理を省力化できる。施肥量は15kg/10aで慣行栽培の25kg/10aの60%に削減できる。
- 周年マルチ下点滴潅水施肥法は、秋の長雨等のため全般に品質が悪い年次には、周年マルチにより乾燥ストレスを付与でき、慣行栽培より平均糖度で約2度高い果実を生産できる(図1)。本法は、夏期に干ばつの年次には、点滴潅水チューブによる潅水で、過度の乾燥ストレスを緩和し、糖度11度以上、酸度1.1%以下の高品質果実割合を慣行栽培の20%から75%に増加できる(図2)。
- 3年間の周年マルチ栽培後にも、樹勢衰弱は認められない(写真1)。収穫量は、移植5年後に2.9t/10aとなり、慣行栽培条件の3t/10aの水準に達する(表1)。
- 設置にかかる初期費用は、約35万円/10aで、収穫量を3t/10a、資材使用期間を周年マルチ3年、点滴チューブ、電磁弁及び液肥混入機を10年と想定した場合、果実1kgあたりの所要経費は、約22円である。
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成果の活用面・留意点 |
- 潅水施肥量は樹齢により増減し、マルチ張り替え時に、堆肥などを投入する。
- 豪雨時には圃場の表面流去水が増加するので、下流となる圃場、用水路で事前対策が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
安定栽培技術
温州みかん
乾燥
栽培条件
省力化
施肥
肥培管理
その他のかんきつ
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