タイトル | ミトコンドリアDNA多型を用いたメカジキ個体群の遺伝学的解析 |
---|---|
担当機関 | 遠洋水産研究所 |
研究期間 | 1992~1992 |
研究担当者 |
岡本浩明 魚崎浩司 魚住雄二 中野秀樹 張 成年 |
発行年度 | 1994 |
要約 | PCR法を用いてメカジキのミトコンドリアDNA分子の中でも特に多くの変異が蓄積されていると考えられるDループ領域を含むDNA断片を増幅した。制限酵素処理によって検出された切断片長多型を用いて、多くの海域で採集した標本の比較分析を行った。高度回遊性魚種にもかかわらず、本種は遺伝的に異なるいくつかの分集団から構成されていることが強く示唆された。 |
背景・ねらい | 全世界に広く分布するメカジキは多くの国によって漁獲されている重要な魚種である。その資源管理を行うにあたっては、系群の有無を確認することと、系群が存在するならば系群毎に適切な管理を行う必要がある。しかし、現在のところ資源管理単位は地理的区分にもとづいた便宜的なものである。遺伝学的情報にもとづいた個体群識別を目的としてミトコンドリアDNAの遺伝的多型を用いた系群判別の可能性について検討した。 |
成果の内容・特徴 | 7標本計338個体についてほぼ同じ長さのDNA断片がPCR法によって増幅された。この断片を4種類の制限酵素(Alu I、Dde I、Hha I、Rsa I)で処理したところ4ないし7種類の切断片長多型を検出した(図1)。これらを遺伝子型とみなしその頻度を標本間で比較検討した(表1)。その結果、太平洋の4標本は全て地中海と南北大西洋標本と有意に異なっていた。さらに、地中海、北大西洋、南大西洋の3標本間の差異は互いに有意であり、太平洋内の標本間でもいくつかの組合わせで有意差がみられた。これらの結果から、各大洋の個体群間には遺伝的交流が殆どないばかりでなく各大洋内でもいくつかの遺伝的に隔離された系群が存在していることが強く示唆された。 |
成果の活用面・留意点 | 高度回遊性魚種において大洋内で系群の存在が示唆されるケースは非常に珍しく、さらに多くの海域標本を分析することによって各海域のメカジキ個体群を特徴づけるマーカーとしてミトコンドリアDNAの多型を応用できる可能性がある。しかし、ミトコンドリアDNA分析の欠点は、個体群の混合を証明することができないことである。そのため、本研究で検出された標本間の差異については今後、核ゲノムの遺伝的変異を指標にした分析を併用して検討する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ |