紫外線増加が動物プランクトンに与える影響

タイトル 紫外線増加が動物プランクトンに与える影響
担当機関 北海道区水産研究所
研究期間 1993~1995
研究担当者 葛西広海
上 真一
田口 哲
齊藤宏明
発行年度 1994
要約 生物に有害な紫外線は人間活動の結果出現したオゾンホールの拡大とともに増加しつつある。海洋の一次消費者である動物プランクトンは、紫外線によって生残率や再生産率に影響を受けることが明らかになった。しかし、その影響は種や分布様式によって異なった。今後増大する紫外線によって動物プランクトン種組成が変化する可能性が示唆された。
背景・ねらい 人間活動の結果出現したオゾンホールのために、地表に到達する生物に有害な紫外線放射量が増加している。海洋生物は陸上生物に比べて紫外線に対する耐性が低い種が多いため、増加する紫外線による影響の評価を行うことが急がれている。動物プランクトンは海洋で最も優占する植食者であり同時に魚類等の主要な餌料生物であるため、紫外線が生残率や再生産に与える影響を調べた。紫外線は海水中では深度とともに減少する。動物プランクトンは昼は深層に分布し夜に表層に移動する日周鉛直移動型の種と、終日表層に分布する終生表層分布型に分けることができるため、それぞれのタイプについて紫外線の影響を調べた。
成果の内容・特徴
  1. 日周鉛直移動型の動物プランクトンであるParacalanus sp.の孵化率は紫外線の増加とともに逆シグモイド型の減少を示し、現在のレベルの太陽紫外線によっても、表層においては孵化が阻害されることが明らかになった。紫外線の孵化率に与える影響は産卵直後に最も高く、産卵後時間が経過するに従ってその影響が低下する傾向が見られた。
  2. 同じく日周鉛直移動型のCalanus sinicus 雌成体の生残率は、瀬戸内海における1月の太陽紫外線を照射することによって変化することはないが、4月および9月の太陽紫外線に数日曝されると生残率が低下することが明らかになった。
  3. 終生表層分布型の橈脚類であるLabidocera maduraeの卵は、亜熱帯の夏至付近の時期の太陽紫外線を受けても低下することはなかった。
  4. 同じく終生表層分布型のPontella rostraticaudaやPontellopsis tenuicauda雌成体の生残率にも変化が見られなかった。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究で紫外線の影響は種や鉛直的な生活様式によって異なることが明らかになった。従って今後増大する紫外線放射量は海洋に分布する動物プランクトン種組成に影響する可能性がある。
  2. 動物プランクトン種組成が変化した場合、現在の海洋生態系全体に影響が及ぶことが考えられる。特に海洋の生産性、漁業生産等が変化することが懸念される。
  3. 紫外線の影響は鉛直的に大きく変化する。動物プランクトン、特に卵の分布は海水の鉛直混合によって影響を受けるため、紫外線の動物プランクトンに与える影響をより詳細に予想するためには物理的な海洋構造を同時に調べる必要がある。
(図1、図2、図3、図4)
図表1 228925-1.gif
図表2 228925-2.gif
図表3 228925-3.gif
図表4 228925-4.gif
カテゴリ 亜熱帯

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