タイトル |
マイクロデータロガーによる自然環境下におけるヒラメの行動解析 |
担当機関 |
日本海区水産研究所 |
研究期間 |
1995~1995 |
研究担当者 |
梨田一也
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発行年度 |
1994 |
要約 |
国立極地研究所(以下、極地研)との共同研究として、極地研で開発したマイクロデータロガー(以下、データロガー)をヒラメに装着して天然海域に放流し、回収されたデータロガーに記録された遊泳水深、環境水温データをもとにヒラメの自然環境下における行動解析を行い、本種の運動生理学的な知見を得ることができた。
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背景・ねらい |
近年のマイクロエレクトロニクスの急速な進歩により、超小型のデータロガー(自記式記録計)の開発が進み、海産魚類にも装着可能なサイズのデータロガーが極地研の研究グループによって開発され、魚類の行動生態の研究の新たな展開の可能性が開けてきた。このデータロガーをヒラメに応用して、本種の行動特性を明らかにすることを目的とした。
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成果の内容・特徴 |
- ヒラメ成魚を対象に放流実験を行い、1993年9月に9個体の内2個体、1994年4月に10個体の内3個体の回収に成功し、10秒間隔(1993年9月)および5秒間隔(1994年4月)で遊泳水深と環境水温のデータを188時間から355時間まで延べ1,317時間取得した。
- ヒラメは負の浮力をもつ典型的な底魚であるが、データロガーにより得られた結果によると一日当たり平均1.2~6.3時間離底しており、離底の高さは平均で1.6~4.7mであった。
- 離底行動はいくつかのパターンに類型化されたが、9月の索餌期には一つのピークをもつ一山型が最も多く出現したが、4月の産卵前期には複数のピークを形成し、より長時間遊泳するパターンが顕著に増加した。
- より高く離底する際には階段状に浮上したが、これは本種の運動生理学的特性、すなわち筋肉中には白色筋が大部分を占めるために一気に上昇できる時間には限度があり、さらに上昇するためには、筋肉中の嫌気的代謝生成物の乳酸を好気的に処理するための時間(ここでは下降に相当)が必要なことに起因すると考えられる。このような階段状の離底行動は夜間に顕著に増加した。
- 活動の日周性では、9月は2個体とも夜間により活発な離底行動を行う夜行型の活動周期を示すのに対し、4月では3個体の内2個体の日中の離底行動が顕著に増大することにより、夜行型の行動リズムがくずれた(図1)。
- 水温環境では、4月と9月でそれぞれ約10℃、20℃と大幅に異なるにもかかわらず上昇率は水温の低い4月の方が大きくなっており、このパラメータは温度に依存するのではなく、供試魚の体重(筋肉量)に比例することが示唆された。
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成果の活用面・留意点 |
- ブラックボックスとなっている海産魚類の生態を明らかにする上で、データロガーは強力な支援機器となりうることが実証された。
- 回収が必須の条件なため対象魚種・海域を選定する際には、一定程度以上の回収率が見込めるかどうかを事前調査などで確認する必要がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
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