タイトル |
カツオの初期生態に関する研究 |
担当機関 |
東北区水産研究所 |
研究期間 |
1994~1996 |
研究担当者 |
小倉未基
田邉智唯
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発行年度 |
1994 |
要約 |
中層トロール網によるカツオ稚・幼魚の大量採集法を開発し、これまで謎とされてきた初期生態に関する情報を得ることが可能となった。その結果、西部太平洋熱帯水域がカツオの初期生活期における重要な成育場であることが明らかとなった。
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背景・ねらい |
西部太平洋熱帯水域は、カツオの初期生活期における重要な成育場と考えられている。しかしながら、本種の初期生態については、これまで有効な採集方法が確立されていなかったこと等から、断片的な知見しか存在しなかった。そこで、カツオの稚魚・幼魚の大量採集法の確立に取り組むとともに、これを応用した初期生態の解明を目指した。
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成果の内容・特徴 |
- 大規模な中層トロール網によるカツオ稚魚・幼魚の大量採集法を開発し、西部太平洋熱帯水域における調査を通じて、これまでに約3200個体の標本を得た(図1)。網の開口部直径は約20m、全長は約70mで、主曳網速度は4~5ノットであった。標本の体長範囲は1~17cmと幅広く、既存の稚魚ネット等による方法では、このように幅広い体長範囲の標本を同時に、しかも大量採集することは不可能であった。
- カツオとともに近縁種であるキハダ、メバチなどマグロ属の稚魚・幼魚も多数採集された(表1)。マグロ属標本の個体数は約1000個体、体長範囲は1~14cmであった。このことから、中層トロールがカツオだけでなく他種の稚魚・幼魚においても応用可能な採集法であると考えられた。
- カツオの稚魚・幼魚の分布水深は0~200mにわたっていたが、分布の中心は100m付近にあることが明らかとなった。また、カツオの成長に伴う遊泳能力の発達により、分布水深も変化することが示唆された(図2)。
- カツオの稚魚・幼魚期における好適水温は20℃以上で主として23℃~27℃にあると考えられた。これは、キハダ、メバチなどの熱帯性マグロ属に比べやや低い温度であった。
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成果の活用面・留意点 |
- カツオの初期生態を明らかにし、西部太平洋におけるカツオの生活史の解明を図ることにより、資源管理のための基礎的情報を提供する。
- カツオの資源研究への応用として、中層トロール網による稚魚・幼魚の定量的採集を行い、その後の資源への加入量予測に結びつけることが必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
シカ
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