新規加入の減少によるマイワシ資源の減少

タイトル 新規加入の減少によるマイワシ資源の減少
担当機関 中央水産研究所
研究期間 1990~1995
研究担当者 銭谷 弘
渡邊良朗
木村 量
発行年度 1994
要約 1980年代末からのマイワシ資源の減少は、乱獲によって引き起こされたのではなく、卵から1歳までの間に起こった大量の死亡のためであることが明らかとなった。またこの大量の死亡は、従来の定説のように孵化後10日前後までの仔魚期に集中して起こったのではなく、仔魚期から1歳魚までの間に起こったものであることがわかった。
背景・ねらい 日本周辺のマイワシ資源は1989年から急減し、昨年の推定漁獲量は115万トンと1988年の1/4にまで減少した。このようなマイワシ資源の減少はちょうど50年前にも起こったが、当時は組織的な資源調査が行われておらず、なぜ、どのようにして減少していったかは明らかでなかった。本研究はマイワシ資源の減少過程を初めて具体的に記述し、減少の原因について検討したものである。
成果の内容・特徴
  1. 1980年代末からの日本周辺のマイワシ資源の減少過程では(図1)、漁獲されたマイワシが急激に高齢化したことが特徴で(図2)ある。
  2. 資源減少は、1988年以降に生まれたマイワシの漁獲資源への新規加入が連続して著しく低水準であったこと(図3)によってひき起こされたが、1988年以降も産卵量はきわめて高水準であったこと(図4)から、産卵親魚の獲り過ぎによることが原因ではなかった。
  3. 1988年以降、新規加入資源尾数が極端に少なくなったのは、大量に生み出された卵が1歳魚までの間に大量に死亡したことが原因であることが分かった。大量死亡の原因としてエルニーニョのような極端な環境変化は考えられなかった。
  4. 卵から孵化した仔魚が餌を摂り始めてしばらくの間(マイワシの場合は孵化後約10日まで)に大量の死亡が起こり易いことは古くから知られており、「年級群の資源水準がこのことによって決定されている」というCritical period仮説は、魚類資源の変動機構研究の中心的な考え方であった。
    太平洋側のマイワシの卵と仔魚の分布量を見ると、卵の量が多い年にはCritical period終了後の仔魚も多く(図5)両者は高い正の相関関係を示した。にもかかわらず、仔魚の量が多い年の1年後に大量の新規資源が加入するという関係は全く見られなかった(図3、5)。このことから、孵化後10日前後までの短期間の死亡率によって資源の水準が決まるというCritical period仮説は否定された。即ち、マイワシの新規加入量の水準は、Critical periodに決まるのでなく、仔魚期後半から稚魚期を通しての累積的な死亡によって左右されると結論された。
成果の活用面・留意点 高水準期からのマイワシ資源の減少は、漁業活動によるものではないことが明らかとなった。現在進行中の急減は、人為の及ぶ範囲を超えた大規模な自然現象であり、これをくい止めることはできない。浮魚資源研究の大きな目的の一つは、このような自然現象を予測し、早期に対策が講じられるように提言することにある。数年先の資源動向を予測する手法の開発と確立に向けて研究を進める必要がある。
図表1 228949-1.gif
図表2 228949-2.gif
図表3 228949-3.gif
図表4 228949-4.gif
図表5 228949-5.gif
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