三陸~房総沖の表層における炭酸系物質の収支

タイトル 三陸~房総沖の表層における炭酸系物質の収支
担当機関 中央水産研究所
研究期間 1990~1995
研究担当者 佐々木克之
下田徹
奥村裕
発行年度 1995
要約 親潮域、移行域及び黒潮域表層の炭酸系物質現存量の解析から、親潮域では春季ブルームにより炭酸ガスが海洋に吸収され水温上昇により海洋から逸散すること、黒潮域では水温変化が炭酸ガス収支に大きく寄与していること、移行域では複雑であることを明らかにした。
背景・ねらい 地球温暖化と関連して、人類起源の炭酸ガスの行方が注目されているが、本研究では日本周辺海域のうち、三陸沖から房総沖の親潮域、混合域及ぴ黒潮域について大気炭酸ガスと海との関係を明らかにすることを目的として取り組んだ。
成果の内容・特徴
  1. 0-50mの表層中の全炭酸現存量の季節変化は冬から秋にかけて減少し冬に再び増加する季節変化を示し、減少量は黒潮域で最も多く、混合域で最も少なく、親潮域ではその中間であった(図1)。
  2. 0-50m層の溶存無機態窒素(硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム塩)現存量の季節変化は親潮城では1月から10月にかけて減少するが、混合域ではわずかに減少し、黒潮域ではほとんど変化がなかった(図2)。
  3. 表層の水温は、親潮域では1月から5月にかけて4℃でその後12℃まで上昇する.移行城でほ14~18℃に上昇し、黒潮域では20~25℃に上昇し、親潮域の春から夏の温度差が最も大きかった。
  4. これらの結果から、どの海域でも冬季の鉛直混合により全炭酸が表層に輪送されるが、
    1. 親潮域では溶存無機態窒素の減少に見られるように春季ブルームにより全炭酸が植物プランクトンに取り込まれ、これが沈降して下層へ輪送されること、夏季から秋季にかけては水温上昇により炭酸ガスが大気へ逸散することにより全炭酸が減少すること、
    2. 黒潮域では溶存無機態窒素が変化していないので植物プランクトンによる取り込み量は少なく、水温上昇により全炭酸が大気へ逸散すること、
    3. 移行域では全体の変化は少ないが、これはこの海域が親潮と黒潮が混合する海域のため、下層からの擾乱により溶存無機態窒素が 供給されることに起因していると考えられる。
  5. 5月の25℃の表層域の炭酸ガス分圧を全炭酸とpHから計算してみると、図3に示すように黒潮域(St.55,57)では500ppm、移行域でも同様な値であり、親潮域では600ppmを超えたが、これを現場水温に換算しなおすと、移行域から親潮域では分圧は300ppmとかなり減少していることがわかる。これは親潮域ではブルームにより全炭酸がある程度消費されてその結果分圧が減少したものと考えられる。
  6. 炭酸ガスを北太平洋の中層に輪送すると考えられている北太平洋中層水の起源を明らかにするために、現場の酸素量と栄養塩量から起源となる水の栄養塩濃度を推定する方法について検討した結果、黒潮が流れている場所及びその南側に親潮起源水が分布していることが推定できた(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 日本近海の炭酸ガス吸収量の定量化に寄与する。
  2. 移行域の解析についてはさらに物理的な考察が必要である。
図表1 228981-1.gif
図表2 228981-2.gif
図表3 228981-3.gif
図表4 228981-4.gif
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