タイトル |
マツカワにおけるインスリンのアミノ酸配列と酵素免疫測定法 |
担当機関 |
北海道区水産研究所 |
研究期間 |
1994~1996 |
研究担当者 |
北海道区水産研究所 資源増殖部 浅海育種研究室 安藤 忠
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発行年度 |
1996 |
要約 |
水産上重要な魚種(マツカワ)のインスリンのアミノ酸配列を明らかにし、高感度かつ特異的な酵素免疫測定法を開発した。この方法により生体内でのインスリンの分泌動態を把握できる。
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背景・ねらい |
成長は視床下部ー脳下垂体系によって制御されているが、成長に必要な物質の同化制御には膵臓のインスリンが重要な役割を果たしている。そこで、摂取された物質の効率的な同化を促す技術を開発するために水産上重要な魚種のインスリンのアミノ酸配列を明らかにするとともに、生体内でのインスリンの分泌動態を 把握するための特異的測定法を開発した。
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成果の内容・特徴 |
- マツカワの膵臓(ブロックマン小体)の酸-エタノール抽出物から逆相クロマトグラフィーなどによりインスリンを精製したところ、2種の分子種(Ⅰ、Ⅱ)が発見された(図1)。
- インスリン-(Ⅰ)、-(Ⅱ)の一次構造を解析した結果、インスリン-(Ⅱ)のB鎖のN末端の2残基以外は同一の配列であった。そして、インスリン-(Ⅱ)のB鎖のN末端の2残基はピログルタミン酸とアラニンであった。ピログルタミン酸を含むインスリンは脊椎動物ではこれまで例がない。
- インスリン-(Ⅱ)を抗原として抗血清を作成し、蛍光基質を使用した競合酵素免疫測定法を開発した。検出限界はインスリン-(Ⅰ)が8pg、インスリン-(Ⅱ)が4pgであった。この感度はマツカワ血清中のインスリン濃度を測定するのに十分な感度である。また、哺乳類のペプチドホルモン(図2)、マツカワの膵臓中のインスリン以外のペプチド(グルカゴンなど;図省略)とは交差性が認められず特異的にマツカワインスリンを検出できることが示された。
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成果の活用面・留意点 |
- インスリン-(Ⅱ)の生理作用はその構造からインスリン-(Ⅰ)とほぼ相同であることが予想されるが、投与実験等により検討することが重要である。
- インスリン-(Ⅰ)、-(Ⅱ)を区別するには逆相クロマトグラフィー等他の技術と組み合わせることが必要である。
- インスリンのアミノ酸配列は魚種間で保存性が高いため、ヒラメ、マダイ等にもこの測定法は応用できる可能性が高い。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
ワイン
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