魚類の低温適応の分子メカニズム

タイトル 魚類の低温適応の分子メカニズム
担当機関 中央水産研究所
研究期間 1995~1999
研究担当者 山下倫明
尾島信彦
発行年度 1996
要約 動物細胞の低温適応に関わる遺伝子の発現調節機能が魚類細胞を用いる研究によって初めて明らかとなった。この遺伝子は低温下で誘導され、細胞増殖・分裂に作用することによって、低温下でんお細胞機能の維持に寄与することが推定される。
背景・ねらい 変温動物である魚類は、発生、成長、成熟等の生理現象が環境水温によって強く影響されることから、水温の急激な変化や季節変動に対応するための温度順化・適応能を発達させていると考えられる。魚類の温度適応能を解明するため、ニジマスの培養細胞を用いて低温順化現象に関わるタンパク質・遺伝子の同定を試みた。
成果の内容・特徴
  1. ニジマス由来培養細胞は0~24℃の幅広い温度域で増殖可能であることが明らかとなった(図1) 。22℃で培養したニジマス培養細胞を4℃で低温順化処理した際に誘導される遺伝子と特異的に発現したタンパク質を調べた結果、低温下でのみ合成される数種類のタンパク質が見いだされた。
  2. 低温誘導性の遺伝子を単離し、その発現特性を解析したところ、フェリチンH鎖およびcold70遣伝子の転写が低温下で活性化されることが判明した(図2)。これらの遣伝子は低温下で誘導され、細胞増殖・分裂に作用することによって、低温下での細胞機能の維持に寄与することが推定された(図3)。
成果の活用面・留意点 温度適応に関わる遺伝子の発現動態を指標として、有用魚種の回遊、行動等生理・生態特性の生化学的解析が可能となり、多様な海洋環境下での魚類の生存戦略の解明や環境ストレス耐性を付与するための種苗生産技術、魚類細胞を用いる環境影響評価法の開発など水産研究への応用が期待される。今後、有用魚種の回遊、行動等生理・生態特性を解明するため、培養細胞系だけでなく、海産魚類、特に卵椎仔魚における遺伝子の解析を進める必要がある。
図表1 229018-1.gif
図表2 229018-2.gif
図表3 229018-3.gif
カテゴリ 季節変動 評価法

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