タイトル |
アユの産卵における産卵環境の役割 |
担当機関 |
中央水産研究所 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
伊藤文成
山口元吉
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発行年度 |
1996 |
要約 |
アユの産卵には特定の物理的条件を備えた産卵場の存在が必要であり、そのような産卵環境がなければ産卵を行わない。これは、環境刺激により誘起されるフェロモンによる雌雄間相互の情報交換が行われないことによる。
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背景・ねらい |
近年、治水・利水を目的とした河川改修や河川横断工作物の設置などによって、河川環境は人為的に著しく改変されてきた。それに伴い、魚類の産卵場の消失が進行し、資源の衰退が危惧されている。そこで、アユを対象として産卵環境の親魚に対する生理的な役割を調べ、産卵場消失の影響を予測する。
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成果の内容・特徴 |
- 産卵盛期にアユ雌雄を産卵環境を設けた水槽に収容すると、数日の内にほとんとの個体が速やかに産卵したが、産卵環境のない水槽では産卵しなかった(図1)。
- 雄は産卵環境の刺激によりステロイドホルモンの分泌が高まり、精液量の増加、精液の粘性の低下など精液の質的変化を起こした。
- また、環境刺激により雌の排卵を促すフェロモンを放出し始めた(図2)。
- 雌はこのフェロモンを感受すると成熟を進行させて排卵すると共に、雄の最終成熟を促すフェロモンを放出した。
- 雌雄とも環境刺激により甲状腺ホルモンの分泌が増加し、異性からのフェロモンに対する感受性を獲得した。
- これらのことから、産卵環境は産卵の準備のために必要なフェロモンによる雌雄間相互の情報伝達に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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成果の活用面・留意点 |
- 産卵場の消失による繁殖への影響に関して、科学的根拠を示すことが可能となる。
- 河川改修あるいは産卵場の造成にあたり、その影響評価や効果判定に応用できる。
- 環境刺激に反応する生理的変化を指標とした新たな環境評価手法の開発か期待される。
- フェロモン物質の解明により、それを利用した人為的産卵統御法の開発が期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
繁殖性改善
評価法
フェロモン
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