混合水域に侵入する親潮水の新しい循環像

タイトル 混合水域に侵入する親潮水の新しい循環像
担当機関 東北区水産研究所
研究期間 1997~2001
研究担当者 清水勇吾
伊藤進一
発行年度 1997
要約 親潮-黒潮前線間の混合水域(東北沖)に侵入してくる親潮水の起源として、オホーツク海水と亜寒帯循環水があること、また、親潮水は、連続した流れを形成しているのではなく、オホーツク海水と亜寒帯循環水から形成される多くの中層冷水塊の集団であることが明らかになった。
背景・ねらい 混合水域の表層(約200m以浅)には、親潮前線から枝状に波及する冷水(親潮第1・第2分枝等)が分布する。その動向は、海域生産力や漁場形成に大きく影響することから、実態解明と予測が重要な課題となっている。しかし、これまでは100m深水温図を用いた表層付近の平面的解析がほとんどで、鉛直方向を含む親潮水の空間的な構造と混合水域における循環の実態を解析した例はなかった。一方、気候変動と密接に関係する北太平洋中層水(NPIW)の起源と形成過程を考える上でも混合水域での親潮水の分布と循環の解明が急がれている。本研究は親潮水の詳細な構造と循環を明らかにし、混合水域における親潮水の挙動及び北太平洋中層水の形成過程の解明に寄与することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 道東~常磐近海域において1994年5月にCTD(水温・塩分)・ADCP(流速)を用いた海洋観測を行った。混合水域に侵入してきた親潮水は,等密度面に沿って黒潮水と混合し,変質する。その変質の度合いを調べるために、水温と塩分の値から混合比(親潮水含有率)を計算してその分布を調べ、ADCPから求めた循環と比較した。その結果、
    1. 中層(26.6-27.0σθ;深度約300-800mに相当)を中心に,混合による変質をあまり受けていない親潮水が分布すること
    2. 混合域中層の親潮水には時計回り・反時計回りの2種類の水塊があること(図1)
    3. 時計回りの循環の親潮水塊は反時計回りのものに比べ岸寄りに分布し鉛直的に厚い構造を持つこと
    が分かった。
  2. 時計回りの低温・低塩分水塊は,その特徴からオホーツク海起源,反時計回りのものは,亜寒帯循環起源と考えられ、親潮の実態はこの2種類の渦の集団であるという,混合水域中層での新しい循環像(図2)を得た。
成果の活用面・留意点 親潮第1分枝は、反時計回りの中層冷水塊の上部構造に対応していると考えられ、本成果は、第1分枝の変動機構の解明に役立つ。また、オホーツク海流出水塊が分布する本州東岸約300-800m深の陸棚斜面上は、スケトウダラ、ツノナシオキアミの生息域と対応しており、本成果は、これら漁業資源の変動と海洋環境との関係解明に役立つ。
図表1 229071-1.gif
図表2 229071-2.gif
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