イガイ類における下痢性貝毒ペクテノトキシンの分解・解毒機構

タイトル イガイ類における下痢性貝毒ペクテノトキシンの分解・解毒機構
担当機関 東北区水産研究所
研究期間 1999~1999
研究担当者 山崎 誠
鈴木敏之
発行年度 1999
要約 イガイ類は,有毒プランクトンが生産する下痢性貝毒成分であるペクテノトキシン2を無毒成分であるペクテノトキシン2セコ酸に分解していることが明らかになった.
背景・ねらい 下痢性貝毒はDinophysis属有毒プランクトンにより生産され,二枚貝が有毒プランクトンを捕食することにより毒が体内に蓄積される.最近,新奇貝毒成分であるペクテノトキシン2セコ酸(PTX2SA)がニュージーランド産ミドリイガイから発見された.PTX2SAは有毒プランクトンが生産するペクテノトキシン2(PTX2)が加水分解により開裂した化学構造を持ち,無毒成分であるため,その起源が注目されていた.本研究では,PTX2SAの起源を明らかにするため,液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)法によるペクテノトキシンの微量分析法を開発し,それを用いて有毒プランクトンから二枚貝に至るペクテノトキシンの動態を追跡した.
成果の内容・特徴
  1. LC/MSによるペクテノトキシンの特異的かつ高感度な分析法を開発した.
  2. 同一日に同一調査点で採取した有毒プランクトンD. acuta,ミドリイガイ,そしてムラサキイガイのペクテノトキシンをLC/MSで分析した.その結果,D. acutaの主要毒成分はペクテノトキシン2(PTX2)であった(図1).一方,ミドリイガイとムラサキイガイの主要毒成分は,PTX2SAとその異性体の7-epi-PTX2SAであった(図2).
  3. D. acutaから精製したPTX2をミドリイガイの抽出液に添加し,PTX2の変化をLC/MSで追跡した結果,24時間以内にほぼ100%のPTX2がPTX2SAに分解された(表1).これらの結果から,PTX2SAはミドリイガイの体内でPTX2が分解されて生じた成分であることが明らかになった.PTX2SAはPTX2とは異なり無毒成分である.本研究により,二枚貝に下痢性貝毒の分解・解毒機構があることが初めて明らかになった.
成果の活用面・留意点 ミドリイガイやムラサキイガイはペクテノトキシンに対しては毒化しにくいことが明らかになり,イガイ類の毒化予知技術を開発する上での基礎的知見を得た.また,二枚貝に下痢性貝毒成分の分解・解毒機構が存在することは,選抜育種などの品種改良技術により,ある種の毒成分に対して毒化しにくい二枚貝を人工的に作りうる可能性を暗示している.
図表1 229148-1.gif
図表2 229148-2.gif
図表3 229148-3.gif
カテゴリ 育種 品種改良

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