タイトル |
明らかになった鳥付き漁場の形成条件、場所、時期および魚種 |
担当機関 |
宮城県水産研究開発センター |
研究期間 |
1996~1999 |
研究担当者 |
高橋清孝
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発行年度 |
1999 |
要約 |
鳥付き漁場は,黒潮系外洋水と沿岸水が混合する仙台湾湾口部で,6~11月に,本来海底~水深20mの底・中層に生息するカタクチイワシが,サバの捕食から逃れて表層へ移動することにより形成されるので,この性質を利用することにより,鳥付き漁場の表層でサバなどを簡単な漁具で確実かつ容易に漁獲できる事が明らかになった。
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背景・ねらい |
宮城県沿岸では初夏から秋にかけて大型の海鳥が大群で密集する海域が出現し,曳き縄などの漁業者は,この鳥付き漁場を「鳥山」と呼んで優良漁場の目印としている。鳥付き漁場は,仙台湾などで頻繁に認められるにもかかわらず,利用者は少数である。これは,漁場形成に関する情報が不足していることによると考えられたので,鳥付き漁場の出現状況を調べ,漁場形成機構の解明を試みた。
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成果の内容・特徴 |
- 1996~1999年の4年間に仙台湾における鳥付き漁場の出現位置を,1998年6月に鳥付き漁場における目視調査,試験操業および科学魚探調査により海鳥と魚類の分布様式を,さらに,1998年8月には仙台湾全域における海洋観測と魚群分布調査により鳥付き漁場を形成する海洋条件を,それぞれ,把握した。
- 鳥付き漁場は,仙台湾湾口部周辺の漁場水深40~100mの海域において6~12月に,長期間(1週間~4ケ月間)にわたって形成されることがわかった。(図1)大規模な鳥付き漁場では半径1マイル以内にオオミズナギドリなど大型海鳥が密集していた。
- サビキ釣りと中層トロールによる試験操業により,鳥付き漁場ではカタクチイワシとマサバが生息し,科学魚探調査や胃内容物調査により,本来底層に生息するカタクチイワシが,マサバによる捕食から逃避して表層へ移動し(図2),これを海鳥が捕食していることがわかった。
- 湾口部の鳥付き漁場においてカタクチイワシの生息水深帯の中心である水深30mの塩分濃度は,33.2~33.5であったことなどから,鳥付き漁場は黒潮系外洋水と沿岸水が混合する海域に形成されることがわかった(図3)。
- 本研究により,鳥付き漁場の形成機構や時期・場所が明らかにされ,漁場内にサバなどの大・中型魚が表層~20m層に確実に生息していることが判明した。
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成果の活用面・留意点 |
- 得られた成果を公表するとともに漁場位置などの情報を随時FAXやホームページで提供することにより,魚群探査機や大規模な漁具などを持たない小型漁船の漁獲を増加させることが可能である。また,鳥付き漁場では,釣りや曳き釣りが主であることから,活魚出荷などにより付加価値を高めて出荷することにより,少量の漁獲で高収入を期待できる。さらに,サバ資源は当歳魚の保護が課題となっているが,鳥付き漁場では1才以上の大・中サバが主である(図4)ことから,鳥付き漁場における操業はサバ資源に与える影響が比較的少ない。
- 今後,鳥付き漁場におけるサバなど漁獲対象魚の分布量を把握する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
出荷調整
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