タイトル |
沿岸域生態系の評価手法に関する基礎的研究 |
担当機関 |
水産工学研究所 |
研究期間 |
1996~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2000 |
要約 |
沿岸域における生物多様性の確保や健全な生態系の保全、水産資源の持続的利用にとって、海域環境を保全し環境と調和した水産基盤整備技術とそのための評価手法の開発が急務となっている。そのため、我が国沿岸域の利用実態に合わせた生態系評価手法を開発するため、沿岸域における開発行為が海域生態系に及ぼす影響に関する既往の評価予測手法の特徴や問題点等を整理分析し、我が国沿岸域への適用方法について検討した。
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背景・ねらい |
持続的養殖生産確保法制定、水産基本政策大網公表等の環境保全を意識した施策が実施されようとしている。「水産資源の適正な保存管理と持続的利用」の実現にあたり、資源管理体制の構築、計画的な資源回復措置、積極的な資源増殖等に加えて、漁場環境や生態系の保全が急務となっており、海域環境を保全し環境と調和した水産基盤整備技術に必要不可欠な生態系評価の開発が要請されている。
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成果の内容・特徴 |
沿岸域における開発行為に対する環境影響評価や、海域環境を保全し環境と調和した水産基盤整備事業に対して、環境影響と事業効果双方の定量的な評価が要請されている(図1)。そこで、我国沿岸域の利用実態に合わせた生態系評価手法の開発を目指して、沿岸域における開発行為が海域生態系に及ぼす影響に関する評価予測手法の特徴や問題点等を整理し、我が国沿岸海域への適用方法を検討した。
- 生態系評価手法(表1、表2)
陸域の湿地生態系の評価手法は、生息場評価のHEPから湿地の機能を評価するWETへ、さらに総合的広域的な観点から湿地の機能を評価するHGM、生物群集機能を評価するIBIに発展してきた。現時点では海域生態系の評価手法はBESTのみであるが、HEP、HGMは極浅海域の藻場干潟域も対象としており、HEPのHIS、HGMのFSIに相当する海産生物の生息状況と海域環境との関係等の生態学的知見の蓄積次第では、海域生態系への適用が可能と考えられる。 HEP:Habitat Evaluation Procedure WET:Wetland Evaluation Technique HGM:Hydrogeomorphic Approach IBI:Index of Biotic Integrity BEST:Biological Evaluation Standardized Technique HSI:Habitat Suitability Index FSI:Function Suitability Index
- 海域への適用
開発すべき海域生態への評価手法が具備すべき機能は、
- 物質循環等の機能評価と生物群集評価の併用、
- 物理的擾乱の影響を考慮、
- 水産有用種の生成長段階毎の生息場評価法の機能評価、
- ゾーニング等による広域的総合的な観点を考慮、
等が必要と考えられる。我が国における環境影響評価は予測の正確性、客観性を重要視していることから、食物連鎖の低次部分は物質循環モデルを用いて、生態系の機能と構造に関する定量的な評価を行う。高次生物については対象生物の環境応答、代謝機構を考慮した固体群動態モデルを併用すべきである。
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成果の活用面・留意点 |
我が国沿岸域に米国で開発されたミチゲーション手法に関する生態系評価手法を適用する場合、劣悪化する沿岸域環境と不特定多数による高密度利用という我が国の沿岸域の利用形態を踏まえて評価手法を改良する必要がある。米国型ミチゲーションのNo Net Lossの概念では、自然環境の劣悪化が顕著な我が国沿岸域において、将来の環境悪化を阻止できない可能性が高いことから、より良質な自然環境の想像や修復Net Gain、天然記念物等や希少生物の生息地保全No Lossの概念が重要である(図2)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
評価法
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