エゾアワビ稚貝の生殖巣が発達し成熟する過程の組織観察

タイトル エゾアワビ稚貝の生殖巣が発達し成熟する過程の組織観察
担当機関 中央水産研究所
研究期間 2000~2002
研究担当者 淡路雅彦
浜野かおる
発行年度 2000
要約 エゾアワビ稚貝の成長に伴う生殖巣の発達と成熟の過程を組織像から観察した。生殖巣が形作られる時期、生殖細胞が出現する時期、雌雄が分化する時期、採苗翌年の成熟(卵黄蓄積、精子形成)の状況が明らかになった。
背景・ねらい あわび類は人工採苗により稚貝、幼貝が生産され、種苗放流に用いられている。稚貝は成長に伴い生殖巣が発達し、一部の個体は放流種苗サイズで成熟することが経験的に知られている。
稚貝の生殖巣の成熟状況は放流後の成長・生残に影響する可能性があるが、アワビ類の生殖巣の組織形成・発達過程や放流種苗の成熟状況に関する知見は少ない。また最近問題となっているアワビ類の生殖に対する有機スズ化合物の影響を検証するためには、生殖巣の形成過程を明らかにして取り組むことが必要である。
そこで、アワビ類稚貝、幼貝における生殖巣の形成と発達過程を明らかにするために、3~5月に人工採苗されたエゾアワビ稚貝、幼貝を材料として、成長に伴う生殖巣組織像の変化を組織切片を作成して観察した。
成果の内容・特徴 牛角状突起の基部前方を中心に観察した結果、以下のことが明らかになった。
  1. 殻長10mm前後で消化盲襄表皮の間に、内皮細胞に覆われた腔所(生殖腔)が形成される。
  2. 採苗後100日程度で、殻長7mm以上の個体の生殖腔内に始原生殖細胞あるいは生殖原細胞が観察されるようになる。この状態は採苗した年の9月まで続く。
  3. 採苗後7ヶ月程度、採苗した年の11月頃に染色仁期卵母細胞を持つ個体が観察され、これらは雌と判別できる。このことから、この頃までに生殖原細胞が形態的に卵母細胞に分化することがわかる。しかしこの時期に組織像から雄を判別することは困難である。
  4. 採苗翌年の6月以降雌雄共に成熟が進み、9月初めには観察した殻長29~41mmの個体中に卵黄蓄積の進んだ雌(卵黄球期,図1)が26%、活発な精子形成を行う雄(図2)が96%の割合で存在した(表1)。この割合は11月にはさらに高まった。
成果の活用面・留意点 [成果の活用面と留意点]
経験的に知られていたとおり、放流種苗の一部は雌雄とともに成熟することが明らかになり、成熟が遅れている個体も放流後の積算水温に応じて成熟が進行する可能性が示された。同じサイズの天然貝の成熟状況との比較が必要である。
図表1 229174-1.gif
図表2 229174-2.gif
図表3 229174-3.gif
カテゴリ あわ

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