タイトル |
砕波帯に棲息するアミ類の沿岸水産資源餌料としての重要性 |
担当機関 |
(独)水産総合研究センター 東北区水産研究所 |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
高橋一生
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発行年度 |
2001 |
要約 |
東北地方の砂浜域波打ち際に生息するコクボフクロアミの捕食者について調査を行い、本種がヒラメ、カタクチイワシ、クロソイ、ヒラツメガニなどの初期餌料として重要であることを明らかにした。本研究の結果は沿岸に生息する魚類および大型甲殻類の若齢期の餌場として、砂浜域の波打ち際が重要な役割を担っている可能性を示している。
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背景・ねらい |
東北地方砂浜域の波打ち際にはコクボフクロアミArchaeomysis kokuboiが卓越して出現することが知られている。近年、砂浜域の波打ち際は魚類仔稚の生育場として重要であるとの認識が高まりつつあり、波打際に生息しているアミ類の餌料価値の定量的な評価が求められている。本研究では本種の餌料生物としての価値を明らかにすることを目的として春-夏季に三陸海岸のほぼ中央に位置する大槌湾砂浜域の波打際において調査を行った。
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成果の内容・特徴 |
調査期間を通じて20科24属24種349個体の魚類が引き網によって採集され、その約70%にあたる277個体がコクボフクロアミを摂食していた。とくに春季のクロソイおよび夏季のカタクチイワシ、ヒラメ、ヒラツメガニは採集個体数と胃内容物の状況からコクボフクロアミの捕食者として重要であると考えられた(図1)。これらの魚介類は主に夜間に砕波帯周辺に出現し摂餌活動を行っていた。(図2)。またヒラメの胃内容物におけるコクボフクロアミの重要度指数(各餌項目の重量を出現頻度、個体数によって重みづけした指数)は昼77%、夜99%といずれも高い値を示したが、胃内容物充満度(体重に対する胃内容物の割合)は夜間のほうが昼間より3倍以上高い値を示し、夕刻から夜間に活発に摂餌を行っていることが示唆された。コクボフクロアミは夜間水柱内に浮上遊泳する事から、本種は夕刻から夜間に海底から離れることによってヒラメ、カタクチイワシのように水柱内に遊泳する餌を獲る魚類に捕食されやすくなっていると考えられる。一方昼間は、トビヌメリ、クサフグなど砂中を啄んで餌を探すタイプの魚類に補食される頻度が増加したが量的には少なく、むしろ同じく砕波帯にすむナミノリソコエビが重要な餌生物となっていた。
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成果の活用面・留意点 |
本研究の結果は沿岸に生息する浮魚および底魚および大型甲殻類の若齢期の餌場として、砂浜域が重要な役割を果たしている可能性を示している。またコクボフクロアミを補食する魚類や甲殻類の多くが、成長に伴って沖合表層、外洋砂浜域、岩礁域、藻場など他の生態系に生息環境を移すことから、砂浜域の波打ち際が様々な沿岸生態系を繋ぐ役目を担っていることを示している。これらの成果は沿岸域の水産資源管理の面にとどまらず、沿岸域の保全管理(環境保全、埋め立て、人工砂浜域造成等)を考える上でも重要であり、今後他海域も含めたさらなる定量的調査の継続が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
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