ストレスホルモンを指標としたイシガレイの成育場環境特性の評価

タイトル ストレスホルモンを指標としたイシガレイの成育場環境特性の評価
担当機関 (独)水産総合研究センター 東北区水産研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 栗田 豊
高見秀輝
山下 洋
発行年度 2001
要約 イシガレイ稚魚の主要な成育場である河口干潟域と外海性砂浜海岸を比較すると、稚魚密度は河口干潟域の方が外海域よりも約10倍高く成長もよかったが、コーチゾル濃度も約4倍高かった。これは河口干潟域の大きな環境変動によるストレスが原因と考えられた。
背景・ねらい 仙台湾においては、イシガレイ稚魚の全成育場面積の6%程度の干潟域において、漁獲に加入した本種資源の約半分が生産されていることを明らかにした。この研究において、河口干潟域の稚魚の方が外海域に生息する稚魚よりも耳石のSr:Ca比が明瞭に高いことがわかった。しかしこれは、塩分濃度の高い環境において耳石Sr:Ca比が高いという通説とは逆の結果であった。一方、生理的ストレスも耳石へのストロンチウムの取り込みを増大させることが知られている。そこで、河口域では環境の変動が非常に大きく、河口干潟域に生息する稚魚は外海域の稚魚よりも大きなストレスにさらされているという仮説を立て、ストレスホルモンといわれるコーチゾルを測定することにより仮説の検証を行った。
成果の内容・特徴
  1. 2000年の調査では、イシガレイ稚魚の密度は河口干潟域(蒲生、広浦)の方が外海砂浜域(北釜、二の倉)よりも約10倍高かった。成長速度も河口干潟域の方が有意に高く(図1)、これは餌生物量が河口干潟域で多いためと考えられた。
  2. 稚魚の体コーチゾル濃度は河口干潟域の方が外海砂浜域よりも約4倍高かった(図2)。
  3. 3月中旬から4月下旬までの水温と塩分は、外海ではそれぞれ2℃、2PSU程度しか変化しなかったが、河口干潟域では1日の中でも最大10℃、30PSUの変化が認められた(図3)。河口干潟域に生息する稚魚のコーチゾル濃度が高いのは、このように大きく変化する環境によって引き起こされた生理的ストレスや浸透圧調節等が原因と考えられた。
  4. 稚魚について、生理的ストレスの指標となるコーチゾル濃度が、天然の成育場環境の違いにより異なることを明らかにした例は本報が始めてである。
  1. 活用面:本研究で用いた手法を導入することにより、コーチゾル濃度を指標として魚類の生息場環境の評価が可能になる。
成果の活用面・留意点
  1. 活用面:本研究で用いた手法を導入することにより、コーチゾル濃度を指標として魚類の生息場環境の評価が可能になる。
  2. 留意点:コーチゾル濃度が高いにもかかわらず、河口干潟域の方が稚魚分布密度、成長速度が高いことから、本研究で認められた外海域よりも4倍高いコーチゾル濃度は、実際には稚魚の生理的許容範囲にあり、稚魚の生活に悪影響は及ぼしていないと判断される。
図表1 229207-1.gif
図表2 229207-2.gif
図表3 229207-3.gif
カテゴリ

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる