マサバを対象としたオペレーティング・モデルの構築

タイトル マサバを対象としたオペレーティング・モデルの構築
担当機関 独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所
研究期間
研究担当者
発行年度 2003
背景・ねらい ねらい:
コンピュータ上に現実のマサバに近い仮想資源モデルを構築し、モデル上で資源の評価と管理の実験を行い、資源評価法や管理方策の妥当性や問題点を明らかにすることを目指す。
成果の特徴:
仮想資源モデルを構築し、評価と管理の実験を行うことにより、現行の制度における問題点を明らかにした。とくに1)2年後のABCを算定する現行の制度は、1年後のABCを算定する場合に比べて、より精度の高い資源評価が必要であること、2)加入量の予測より、資源量の評価のための調査に重点をおくことが必要であることが示された。
  1. オペレーティング・モデル:資源の評価と管理の方法は、現実の魚類資源に対して試すことができないため、その妥当性を十分検討できない。オペレーティング・モデルは、コンピュータ上に再現した仮想の魚類資源に対して実験を行い、評価手法や管理手法の妥当性を検討する(図1)。
  2. マサバのオペレーティング・モデルの構築:仮想資源は年齢構成のあるモデルを構築した。t年a歳の資源尾数はNta=Nt-1,a-1exp(-Ft-1,a-1-M)で計算した。自然死亡係数(M)は0.4と仮定した。漁獲係数(F)は管理方策によって制御される。再生産は産卵親魚量と伊豆諸島北部海域冬季表面水温を説明変数とし、自己相関を考慮したリッカー型再生産式を仮定した。成長と成熟割合は密度依存的に変化するとした。以上のように構築した仮想資源は過去のマサバの資源変動をある程度再現できた。この仮想資源から、漁獲量や調査によってデータを取得→資源量評価→ABC算定→定めたABCに従った漁獲という現実の資源管理の流れをコンピュータ上に再現した(図2)
  3. 時間遅れの影響:VPAによる評価手法は、ABCによって漁獲を制限されると正確な資源評価が困難になるため、真の資源量を表す指標(BI)が必要であること、将来のABC算定には加入量を表す指標(RI)を用いることが有効であることがわかった。両指数を用いない場合管理の成功割合は0%であった。現行の制度は管理基準の決定から実行までに2年の時間遅れがある。この影響を調べるため、時間遅れがある場合とない場合について、BIとRIに求められる精度の違いを比較した。
    1. BIのみ用いる場合:BIの精度が高いときには高い割合で管理は成功した。BIの精度が低くなると成功する割合は急激に減少した。時間遅れのある場合、成功する割合は低くなった。
    2. RIのみを用いる場合:成功する割合は低く、時間遅れがある場合特に低かった。RIの精度が高いと比較的成功の割合が高くなる傾向はみられたがBIほど顕著ではなく、RIに求められる精度はBIより低いことが示唆された。
    3. BI・RIを使用した場合:最も管理の成功の割合が高まった。BIの精度の影響が強く、RIの精度の影響はBIほど強くなかった。
    BIの精度は時間遅れがある場合、時間遅れがない場合に比べBIに求められる精度は高く、現行の制度では精密な資源評価が要求されることが示唆された。新規加入量の将来予測よりも現存資源量の評価に重点をおいた調査を行うことがより重要である。
成果の活用面・留意点 構築した仮想モデルを用い、現行の管理方策だけではなく、考えられるさまざまな管理方策について実験を行い、適切な管理方策を定量的に明らかにすることが可能である。
図表1 229483-1.png
図表2 229483-2.png
図表3 229483-3.png
図表4 229483-4.png
カテゴリ 評価法

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