タイトル |
ズワイガニゾエア幼生の高度不飽和脂肪酸の要求 |
担当機関 |
独立行政法人水産総合研究センター |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
小金隆之
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発行年度 |
2004 |
背景・ねらい |
ズワイガニでは,幼生をビーカー規模の小型容器で飼育することは比較的容易である一方、大型水槽では幼生が水槽底に沈降し、底面の沈殿物等の影響によって大量死亡が発生しやすいことから、種苗生産は著しく困難である。これまでの技術開発によって、飼育水を機械的に撹拌して幼生の沈降を防ぐとともに、大量死の原因の一つとして幼生の細菌感染を想定し、飼育環境の清浄化を試みたところ、ゾエア期の生残率が大きく向上することが判明した。しかし、メガロパ変態直後に大量死がみられ、その原因としてゾエア期の栄養不足が考えられた。そこで、ズワイガニ幼生の大量死防除技術を開発するために、ゾエア幼生の栄養(必須脂肪酸)要求の把握に取り組み、メガロパ変態後の生残に及ぼす餌料中の脂質の影響を検討する。
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成果の内容・特徴 |
小型容器に収容したゾエアにオレイン酸で濃度を調整したEPAオイルで栄養強化したワムシを給餌してその稚ガニ期までの生残と発育を調べた結果,ワムシのn-3HUFA含量が1.17~2.66g/100gの範囲ではn-3HUFA含量が高いほど生残率が高くなった(表1、図1~2)。また、n-3HUFA含量が1.17g/100gと低い区では生残・成長が低い値を示し,第1齢稚ガニ脱皮時の甲幅が小さくなった(図3)。これらのことから、餌料中のn-3HUFAの多寡が幼生の生残、成長に影響することが明らかになった。また、その適正含量は2.66g/100g前後であることが示唆された。
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成果の活用面・留意点 |
- 暖水性甲殻類のアミメノコギリガザミでは、メガロパ期の大量死とゾエア期の栄養状態に深い関係が認められており、冷水性甲殻類のズワイガニにおいてもゾエア幼生が必須脂肪酸として高度不飽和酸を要求することが明らかになった。
- 次のステップとしてその要求量の把握に取り組み、EPAとDHAの要求量を明らかにする。
- 最終的には,生物餌料の適正な栄養強化剤の選択や強化方法の開発につながり、ゾエア期の正常な発育が期待され、メガロパ期の大量死防除策を開発できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
防除
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