タイトル |
浦ノ内湾の調整池におけるノコギリガザミC1直接放流技術の有効性と効果の検証 |
担当機関 |
高知県水産試験場 |
研究期間 |
2000~2004 |
研究担当者 |
児玉修
青野怜史
大河俊之
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発行年度 |
2004 |
背景・ねらい |
浦ノ内湾では平成9年から中間育成された種苗が漁場付近の海域へ放流されている。これに対して、平成14年から中間育成を行わない1令稚ガニ(C1)種苗を汽水調整池(図1)に直接放流する手法(C1直接放流)が試験的に実施された。その結果、調整池付近の漁場におけるノコギリガザミの漁獲が大幅に増加したことからC1直接放流の効果が示唆された(図2)。そこで、C1直接放流の効果を検証するため、新たに開発された標識方法とあわせてサイズ比較放流試験と追跡調査を実施した。
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成果の内容・特徴 |
- 本種の有効な標識の開発により放流群の識別が可能になったことから、比較放流試験が可能となった。その標識とは遊泳脚の一部を部分切除し、再生した遊泳脚の変形から判別するものである(図3)。飼育試験における1年後の有効標識率は73.8%であった。
- C1種苗放流後にC6種苗(中間育成後に遊泳脚標識)を追加放流することにより、サイズ比較放流試験を実施した(表1A)。平成15年7月から平成16年1月までの漁獲前の追跡調査における再捕個体数とC1種苗受入時の個体数から再捕率を計算すると、C1が0.76%、C6が0.13%であったことから、前者の方が効果が高いと考えられた。なお、再捕個体のサイズは全甲幅28.9~121.4(平均77.5)mmで、ほとんどは50mm以上(C8以上)であった。
- 追跡調査において多く混獲された生物を比較すると、海域に多く分布するイシガニ属等の大型カニ類が調整池内にはほとんど分布していなかった(表1B)。これは調整池が平均24.1(2.8~32.2)pptの汽水環境であることに関連していると推察され、放流されたC1種苗が生残可能であった要因として調整池は捕食者であるイシガニ類の少ないことが考えられた。
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成果の活用面・留意点 |
- C1直接放流は労力やコストを削減できる有効な放流技術であるが、放流に適した環境条件は捕食者以外にも要因が考えられるため、検証する必要がある。
- カニ類において標識を用いた比較放流試験による効果検証の知見は少なく、貴重な事例であると考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
コスト
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